| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) M02-07 (Oral presentation)
海洋の有用魚種は、観測以前ではどのような個体数の長期変遷をたどってきたのだろうか。これまで、堆積物記録から動態が明らかにされた魚種はわずかで、残る数多くの有用魚種については不明である。また従来用いられてきた魚鱗化石ではごく限られた場所にある貧酸素海域でしか記録が得られないため、ほとんどの海域で過去の魚類生産動態に関する知見は得られていない。
本研究では、この問題を唯一克服できる可能性を秘める環境DNA技術に着目し、魚のDNAが海底堆積物から実際検出されるかどうか、検出されるなら、そのDNA量の経年変化は個体数を反映するかについて検討した。本研究は、貧酸素海域として知られる大分県別府湾の海底堆積物を用いて、カタクチイワシ、マイワシ及びマアジの環境DNAを定量PCRで定量した。
その結果、堆積物からカタクチイワシ・マイワシ・マアジのDNAが検出され、海洋堆積物中に魚のDNAが存在することが初めて明らかとなった。さらに、近年我々が明らかにした魚鱗記録との対応関係から、マイワシの環境DNA量が魚鱗が多い時期に多いことが確認された。鱗にはわずかなDNAが検出されるものの、バルクの堆積物の量を説明しうる程の量ではないこと、粗粒サイズ画分にもわずかなDNA量しか検出されなかったことから、鱗以外の細粒サイズの粒子画分にDNAが存在することがわかった。これらの結果は、鱗以外でも個体数変動を捉える指標になりうることを示唆している。