| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム ME02-4  (Presentation in Symposium)

植物における光受容体による温度感知
Temperature sensing by photoreceptor in plants

*児玉豊(宇都宮大学)
*Yutaka Kodama(Utsunomiya Univ.)

植物が環境に応じて細胞内の葉緑体の配置を最適にすることは、光合成を最大化するために重要である。たとえば、葉緑体が光に応答して細胞内配置を変えることは、100年以上前から知られている。葉緑体は、光合成を最大化するために弱光に集まり、光阻害を回避するために強光から逃げる。これらの現象は、光誘導性の葉緑体運動と呼ばれており、青色光受容体フォトトロピンによって制御されている。また、葉緑体の細胞内配置は、低温処理、暗黒処理や接触刺激などによっても変わることが報告されている。しかし、光誘導性の葉緑体運動に比べて、これらの現象の詳細や制御因子に関しては、ほとんどわかっていない。
 これまで演者は、温度依存性の葉緑体運動に着目し、研究を行ってきた。上述のとおり、葉緑体は、温暖条件では光合成を最大化するために弱光に集まる。しかし寒冷条件に変わると、葉緑体は、弱光から逃げることが知られている。我々は、この現象を「寒冷逃避反応」と呼んでいる。演者らは、葉緑体の寒冷逃避反応を解析する過程で、フォトトロピンが低温を感知する温度センサーとしてはたらくことを発見した。また、葉緑体の寒冷逃避反応が、光合成の低温光阻害を軽減する役割があることも明らかにした。本講演では、葉緑体の寒冷逃避反応、フォトトロピン、および植物の温度センサーに関して議論したい。


日本生態学会