| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-080  (Poster presentation)

他個体に左右されるオオミズナギドリの採餌行動
Foraging Behavior of Streaked Shearwater influenced by others

*Sei YAMAMOTO, Yoshinari Yonehara, Miho Sakao, Aran Garrod, Katsufumi Sato(University of Tokyo)

オオミズナギドリ(Calonectris leucomelas)は春から秋にかけて日本近海の島嶼で繁殖する海鳥である。繁殖期間中、彼らは餌を獲るために洋上へ出かける。しかし、オオミズナギドリが採餌に出かける洋上は、樹木や建造物などがある陸上とは違い、目印となるものがほとんどなく、オオミズナギドリが何によって餌場を認識しているのかは明らかになっていない。そこで本研究は、オオミズナギドリが洋上においてどのようにして餌場探しをするのかを明らかにすることを目的とした。
2010年から2018年の間に岩手県船越大島において、繁殖期のオオミズナギドリ成鳥の腹部に小型のビデオロガー(重さ15 g, 高さ19 mm, 幅10 mm, 長さ52 mm)を装着・回収し、得られた動画記録から着水イベントを抽出した。連続する着水間の飛翔時間の長さを使い、78秒以上の飛翔で挟まれた着水をひとまとまりの着水バウトとした。この着水バウト中の採餌行動の有無から、採餌と休息の2つのバウトに区別した。
オオミズナギドリ31個体から合計72時間の動画記録を得た。動画より抽出した200回の着水バウトを、139回の採餌バウトと61回の休息バウトに分類した。採餌バウトのうち、同種他個体がいたのは72.7%、単独での採餌は27.3%であった。同種他個体がいた採餌バウトのうち約半分において、大型魚など異種の捕食者も同時に見られた。異種の捕食者としてシイラ、ブリ、カツオなどが記録されており、これら大型の魚食性魚類が水面に追い上げた餌生物をオオミズナギドリが採餌する様子が確認された。単独での採餌では、海面に漂う魚やイカの死骸などに反応して着水をしたり、魚食性大型魚類が水面付近であげた水しぶきに反応したり、何もない海面に着水して動物プランクトンをついばんだりする様子が観察された。以上より、オオミズナギドリは、採餌をしている同種他個体や異種の捕食者、死骸などを目印にして餌場を探していることが示唆された。


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