| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-089  (Poster presentation)

コアジサシの集団モビング影響を与える個体内・環境要因
Influences of individual intrinsic and ecological factors on mobbing in little terns

*西條未来(総合研究大学院大学, Little Tern Project), 北村亘(東京都市大学, Little Tern Project), 沓掛展之(総合研究大学院大学)
*Miki SAIJO(SOKENDAI, Little Tern Project), Wataru Kitamura(Tokyo City Univ., Little Tern Project), Nobuyuki Kutsukake(SOKENDAI)

子を守るための対捕食者行動は、子の数や繁殖ステージによって変化することが知られている。しかし、集団で対捕食者行動を行う種において、周囲の個体の行動を考慮したうえで、対捕食者行動の個体差を分析した研究は少ない。地上営巣の鳥では、対捕食者行動のために親が巣から離れている間に巣の温度が上昇し、卵や雛が死亡することも知られている。そのため、地面温度によっても対捕食者行動が変化することが予測される。本研究では、集団で地面に営巣するコアジサシを対象に、モビング参加の個体差の決定要因について明らかにすることを目的とした。東京都森ヶ崎水再生センターの屋上に形成されたコアジサシコロニーを対象に、2018年5月から7月の間、2か月半の行動観察を行った。各巣のステータス(営巣開始日、卵の数)と、捕食者が接近した際のモビング行動、また巣内と巣外地面の温度のデータを得た。捕食者の種類は目視で確認し、記録した。主な捕食者は、カラスとチョウゲンボウであった。分析の結果、捕食者の種類によってモビング行動が変化することが明らかになった。カラスに対するモビングより、チョウゲンボウに対するモビングの方が、モビングに参加する個体が多く、一回のモビングの時間が長かった。卵の数、営巣時期によってモビング行動は変化しなかった。コアジサシが長寿命の鳥であるため、翌年以降の繁殖の機会が残されているからであると考えられる。また、地面温度が高くなると、モビングに参加する個体が多くなり、一回のモビングの時間が短くなった。地面の温度が高い日に巣から長時間離れることは子にとって危険であるため、早く捕食者を追い払うために協力してモビングを行った可能性がある。


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