| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-091  (Poster presentation)

遺伝情報を用いた親子判定によるツキノワグマの分散距離の推定
Estimation of dispersal distance of Asian Black Bear by parentage analysis

*高山楓(東京農工大学), 大西尚樹(森林総合研究所), 山崎晃司(東京農業大学), 姉崎智子(群馬県立自然史博物館), 長沼知子(東京農工大学), 小池伸介(東京農工大学)
*Kaede TAKAYAMA(TUAT), Naoki Ohnishi(Tohoku, FFPRI), Koji Yamazaki(TUA), Tomoko Anezaki(Gunma Mus. of Natural History), Tomoko Naganuma(TUAT), Shinsuke Koike(TUAT)

 一般に動物の分散行動とは、個体が出生地から離れ、繁殖地へ移動する行動のことを表し、個体群動態だけでなく個体群の遺伝子構造にも大きな影響を及ぼす。分散する個体の割合や分散規模には雌雄差があり、哺乳類は主にオスが出生地から移動し、メスは出生地付近にとどまる傾向がある。この傾向はクマ類にも確認されているが、ツキノワグマにおける分散行動は不明な部分が多い。そこで本研究は、群馬県・栃木県での学術捕獲個体および駆除個体の計553個体の遺伝情報を用いて、ツキノワグマの雌雄の分散行動の規模の違いを明らかにするとともに、分散行動を開始する年齢を推定した。
 はじめに、分散距離の推定のために個体間の親子判定を行い、母子間の距離を分散距離とした。その結果、オスはメスよりも分散距離の規模が大きいことが示された。続いて、分散行動を開始する年齢の推定のために、雌雄それぞれで空間的遺伝構造解析を行い、年齢ごとに近縁な個体間の距離を比較した。その結果、メスは繁殖可能な年齢になっても出生地付近にとどまる可能性が示唆された。一方、オスは3歳以降に分散行動を開始する可能性が示唆された。以上から、ツキノワグマも他のクマ類と同様の分散行動を行う可能性が示唆された。


日本生態学会