| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-105  (Poster presentation)

ミツボシツチカメムシにおける雌親の存在と給餌が幼虫のパフォーマンスに及ぼす影響
Effects of mother on offspring performance in a subsocial bug Adomerus triguttulus

*松岡宏樹(佐賀大学・院), 側垣共生(鹿児島大学・院), 野間口眞太郎(佐賀大学・院)
*Hiroki Matsuoka(Saga Univ.), Tomoo Sobagaki(Kagoshima Univ.), Shintaro Nomakuchi(Saga Univ.)

親による子の世話には、親に適応度上の利益が存在しており、それを明らかにすることは生物における亜社会性の進化過程を考察する上で重要である。ミツボシツチカメムシは雌親が子の世話を行う亜社会性昆虫である。本種は卵塊や子の防衛、子に対する給餌などの様々な世話を行う。給餌は雌親が巣から離れて寄主種子を探索し、巣へ運搬することによって行われ、種子運搬後の雌親は摂食している子の傍に留まる。本研究では、ミツボシツチカメムシの雌親による子の世話の利益に関して、雌親が適応度を高める上で寄主種子を運搬して給餌することが重要なのか、もしくは、運搬・給餌行動ではなく子に随伴することが重要なのかを検討した。佐賀市で採集した産卵直前の雌を採集し、室内で産卵させた。雌親とその卵を孵化まで飼育し、孵化後に巣への給餌方法と雌親の随伴の有無を変化させた実験区(雌親自身に給餌させる親有・親給餌区、雌親が随伴するが人為的に給餌を行う親有・人為給餌区、雌親がおらず人為的に給餌を行う親無・人為給餌区)に振り分けた。そして、子の分散と発育を比較した。その結果、1齢幼虫と2齢幼虫の分散数、3齢幼虫までの生存率、3齢幼虫の体長について、いずれも雌親による給餌や随伴の有意な効果は検出されなかった。雌親による給餌は、種子が一か所に存在することで子の分散を抑制し、子の効率的な摂食を可能にしているのかもしれない。また、雌親の随伴は、野外条件下では捕食者などから子を防衛するために行われているのかもしれない。


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