| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-106  (Poster presentation)

チョウセンカマキリの繁殖フェノロジーと雌の交尾頻度の推定
Reproductive phenology and female mating frequency in the praying mantid Tenodera angustipennis

*長田祐基(神戸大学)
*Yuki Nagata(Kobe University)

 カマキリは、性的共食いによって生じる性的対立と、それに伴う配偶形質の適応を研究するための興味深い材料である。配偶形質の進化を研究する上では、雌雄の交尾頻度を知ることが重要であるが、カマキリの野外における雌の交尾頻度を定量した研究は少ない。そこで本研究は、チョウセンカマキリを対象に、雌が野外においていつ、どのくらい交尾しているのかを解明することを目的として、野外調査による繁殖フェノロジーの解明を行った。
 野外調査は、兵庫県北区淡河町の水田とその周辺の草地を調査地として、幼虫の羽化から繁殖期が終了するまでを含む8月中旬~10月下旬まで、2017年,2018年の2年間にわたって行った。約2週間毎に調査地内のルートに沿って、チョウセンカマキリの幼虫、成虫および卵鞘を採集した。成虫雌は解剖し、受精嚢内の精子の有無を記録した。個体数、羽化率、既交尾率、産卵数の時間的推移をグラフ化するとともに、パラメトリック生存時間分析によって羽化時期、雌の初回交尾時期、産卵時期の中央値を推定し、繁殖フェノロジーを評価した。
 結果、成虫個体数のピークは9月中旬で、性比の推移からは雄性先熟の傾向がうかがえるとともに、繁殖期後期には雌の割合が増加した。雄性先熟の存在は、先に交尾した雄が有利となるような雄間競争の存在を示唆する。また、羽化は9/2、交尾は9/26、産卵は10/7付近に中央値が推定され、羽化から交尾までに約24日、交尾から産卵までに約11日を要することが明らかとなった。今後は、雌が交尾後にフェロモン放出を止め、雄を誘引しなくなる期間を特定し、雌の最初の交尾から産卵までの期間(11日)と比較することで、雌の多回交尾の頻度と、結果として生じる精子競争の程度を見積もることにつながると期待される。


日本生態学会