| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-107  (Poster presentation)

背に雄を乗せたまま潜水産卵するアメンボ―水中で雄の存在が雌の呼吸に与える影響
The presence of males on female back affects female respiration when females oviposit in water striders.

*川原佑菜, 粕谷英一(九州大学)
*Yuna Kawahara, Eiiti Kasuya(Kyushu Univ.)

 マツモムシ類やミズムシ類といった水生半翅目の一部は体表面に空気の層を付着させ水中で空気呼吸を行う。この泡は水中に空気を持ち込むだけではなく、水に溶けた酸素を取り込むこともでき、物理エラとも呼ばれている。昆虫が空気層に元々含まれていた酸素を消費して酸素分圧が低下すると周囲の水に溶けている酸素が空気層の中に拡散するため、酸素の初期量に対し長く潜水できる。空気層の表面積が大きく周囲の水と触れるエリアが大きい程拡散の効率も大きく、空気層の体積が大きい程酸素の初期量も多いであろう。このように空気層の表面積と体積は水中での活動時間に関わる項目であると思われるが、実際に測定された例はかなり少なく、空気層の大きさと潜水できる時間の関係は調べられていない。
 それらを調べるため、潜水産卵を行うナミアメンボを用いた。潜水産卵は雌が単独で行う場合と交尾後雄が背中に乗ったままの状態(タンデム)で行う場合があり、タンデムの方が単独より1回あたりの潜水時間が長いことが知られている。タンデムで潜る時の方が単独で潜る時よりも空気層の体積や表面積が大きくなるためだと予想されるが、タンデムは単独より空気層が大きいかどうかを含めまだ実証されていない。
 そこで本研究ではナミアメンボの雌を単独あるいはタンデムで強制的に水に沈めて空気層の体積や表面積を測定し、単独とタンデム間で比較した。沈めてから窒息するまでの時間やその間に動いた回数も測定し、空気層の大きさとの関係を調べた。
 タンデムの空気層は体積と表面積ともに単独より有意に大きかった。窒息するまでの時間はタンデムの方が単独よりも長い傾向があったが有意な差は見られなかった。また、単独かタンデムかによらず水中で動いた回数が多いほど長く、水中で動いた回数はタンデムの方が有意に多かった。


日本生態学会