| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-123  (Poster presentation)

御岳におけるオガラバナ個体群の常緑針葉樹種との共存メカニズム
The co-existence mechanism of Acer ukurunduense population  with evergreen coniferous species in Mt.Ontake

*岡田実憲(名古屋大学), 西村尚之(群馬大学), 中川弥智子(名古屋大学)
*Minori OKADA(Nagoya Univ.), Naoyuki Nishimura(Gunma Univ.), Michiko Nakagawa(Nagoya Univ.)

亜高山帯常緑針葉樹林における樹種の共存メカニズムをテーマとした多くの研究では、優占種である常緑針葉樹に着目してきたが、下層に生育する落葉広葉樹の個体群維持機構には不明な点が多い。そこで本研究では、落葉広葉小高木であるオガラバナの生活史特性を明らかにしたうえで、その空間分布パターン、光環境や定着基質といった生育環境、および動態特性を常緑針葉樹のものと比較することで、亜高山帯常緑針葉樹林におけるオガラバナと常緑針葉樹4種との共存メカニズムの解明を目指した。 
調査は、御岳の亜高山帯常緑針葉樹林内に設置された2 haプロットのうち、斜面下部の1 haにおいて実施した。2017年と2018年に、オガラバナの開花調査、実生(樹高1.3m未満)と稚樹(樹高1.3 m以上DBH5cm未満)の調査、そしてリタートラップ(81個)よる種子とリターの生産量を調査した。また、2018年に樹高1.3 m以上の全ての樹木を対象とした毎木調査を実施した。また、2009年の毎木調査のデータを動態の解析に用いた。
2017年にはオガラバナの開花は見られなかったが、2018年にはわずかに種子が生産され、種子生産には豊凶があることが示唆された。多くの種子は開花個体周辺に落下していたものの、一部の種子は開花個体から50 m以上離れた場所に散布されており、実生も比較的広範囲で確認された。オガラバナは針葉樹と比較して光環境の良い場所に分布しており、陽樹的な性質を持つシラビソとは同所的に、耐陰性の高いコメツガとは排他的に分布していた。また、オガラバナは岩の基質に分布する個体割合が多く、針葉樹よりも新規加入率が高く、成長速度が大きかった。以上から、コメツガとは光環境の違いにより、土壌に多いオオシラビソや木質基質に更新を依存するトウヒとは定着基質の違いにより、生育環境では競争関係にあると思われたシラビソとは新規加入率や成長速度の違いにより、常緑針葉樹4種との共存が可能であると考えられた。


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