| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-133  (Poster presentation)

局所的環境条件がブナ若齢実生の生残と成長に及ぼす影響
Effects of local environmental factors on the survival and growth of young beech seedlings

*山田和弘(岡山大学), 赤路康朗(国立環境研究所), 宮崎祐子(岡山大学), 安達亮太(岡山大学), 谷口武士(鳥取大学), 兵藤不二夫(岡山大学), 坂本圭児(岡山大学), 廣部宗(岡山大学)
*Kazuhiro YAMADA(Okayama University), Yasuaki AKAJI(NIES), Yuko MIYAZAKI(Okayama University), Ryota ADACHI(Okayama University), Takeshi TANIGUCHI(Tottori University), Fujio HYODO(Okayama University), Keiji SAKAMOTO(Okayama University), Muneto HIROBE(Okayama University)

 森林林床では光環境が樹木実生の成長や生残の主な制限要因とされるが、土壌環境や菌根菌も影響を与える。本研究ではブナ実生の生残と成長に前年個体サイズ、土壌環境、光環境および菌根菌の及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。岡山県北部の若杉天然林で2017年にブナ1年生実生50個体を選定して主軸長を測定し、2018年に生残2年生個体を掘り取って各種成長特性値(地上部・地下部乾燥重量、根長、根端数、当年枝長、葉数、葉面積)を測定するとともに、実生生育場所の光環境(相対光合成有効光量子束密度(rPPFD))と土壌環境(土壌含水比、土壌窒素無機化速度、硝化速度、pH(H2O))を測定した。また一部の個体では菌根化根端数を計測した。統計モデルにより環境条件との関係を解析したところ、ブナ実生の生残/死亡については死亡個体が少なく予測に有効な説明変数は検出できなかった。2016年に採取したブナ2年生実生16個体のデータも含めた実生の成長特性値については、前年個体サイズが大きい個体や光環境が良好な場所で成長が良く、また、土壌環境が良好な場所で地下部乾燥重量と根長が大きくなることが示唆された。さらに菌根化率も説明変数に含めた統計モデルにより、菌根化率が高いと実生の成長が良好であることが示唆された。一般に土壌環境が良好な場所では相対的に不足する光資源獲得のために地上部を発達させる。しかしながら、樹木の若齢実生は様々な外的要因に対して脆弱であり、軽度の乾燥や地表攪乱などにより定着阻害を受け枯死する可能性が高い。そのため、ブナ若齢実生は光環境の良い場所でより地下部を発達させて土壌水分・養分吸収や物理的支持能力を高めていると考えられた。また、菌根菌の感染は未発達なブナ若齢実生根系の土壌水分・養分吸収能力を補助することにより成長に寄与していると考えられた。


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