| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-139  (Poster presentation)

在来・外来タンポポの分布変化と生活史特性
A study on native and non-native Taraxacum species (Asteraceae) : their Distribution change and Life history

*阪本愛(愛媛大学), 井上侑哉(服部植物研究所), 坪田博美(広島大学)
*Mana SAKAMOTO(Ehime Univ.), Yuya Inoue(Hattori Botanical Laboratory), Hiromi Tsubota(Hiroshima Univ.)

タンンポポ属植物はキク科の多年生草本で,北半球に広く分布する.日本では在来種に加えて,外来種とそれらの雑種も存在する.筆者はこれらのうち7種1変種1品種の在来種と,2種の外来種,雑種を対象に,2007年以降中国・四国地方で分布調査を行っている.そこで今回は,この調査で得られた分布情報をもとに,中国・四国地域におけるタンポポ属植物各種の分布の特徴とその変化を明らかにすることで,今後の分布を予想することを目的とした.調査の結果,特徴的な分布が見られたのは城を中心とした地域であった.とくに広島城や岡山城などでは,城の内外で分布が大きく異なっており,その地域での稀産種を確認することができた.一方で,松山城や福山城,岩国城ではこのような特徴は確認できなかった.城以外の全体の分布変化では,在来種が個体数を大きく減らした場所を9か所確認し,それらはいずれも土地開発などの人為的要因による環境変化があった場所であった.そして,これらのなかには在来種に加えて外来種や雑種も生育していた場所が4か所含まれていた.その一方で,在来種が土地開発後に定着したと考えられる場所も3か所あり,稀産種のモウコタンポポも確認された.したがって,条件がそろえば在来種でも新たな定着は可能であると考えられる.その他,4か所で外来種や雑種の新たな定着を確認できた.これらは,各調査地点の敷地の出入り口付近と外周に面している所に限られていた.以上のことから,タンポポ属植物の分布は風散布に加えて,土地開発などの人為的な影響に大きく依存していることが示唆された.今後,大規模な土地開発が予定されている地域では本属の分布が大きく変化する可能性が高い.


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