| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-140  (Poster presentation)

都市化は植物の機能形質を変化させるか?阪神地区の水田における検証 【B】
Does urbanization change plant functional traits ? a case study of paddy ecosystem in Hanshin area 【B】

*中田泰地, 丑丸敦史(神戸大学)
*Taichi Nakata, Atushi Ushimaru(Kobe University)

近年、急速に進む都市域の拡大は、人工地の増加に伴う生育地の縮小・分断化や気温・土壌条件の改変を通じて、植物の生育環境に負の影響を及ぼしている。都市化による在来植物種数の減少が数多く報告されてきた。一方、都市環境下でも生育できる植物種においては、都市において自然環境下と異なる形質がみられる例も報告されるようになってきた。フランスでの先行研究では、種子散布に関する形質に農村-都市間の変異が確認されており、都市環境への適応がみられることが示唆されている。しかし、都市から農村にかけて生育する植物の機能形質の種内変異について調べた研究は未だ少なく、単一種にのみ着目して行った研究に限られているため、一般的な傾向があるのか、種間に差異があるのかは解明されていない。そのため都市化が植物へ及ぼす影響を理解するうえで複数種を対象とすることは重要であると考えられる。
本研究では、都市化が機能形質の種内変異をもたらすのかを検証するため、阪神地区の里山から都市にかけて、水田畦畔に生育する在来植物の機能形質を測定し、比較を行った。調査は14の水田地域で行い、調査地点から半径1㎞以内の人口地面積の割合を都市化度の指標とした。対象種はツユクサ、ミゾカクシ、キツネノマゴ、オニタビラコの4種で、各種の開花高、葉面積、SLA(葉面積比)、LDMC(葉の乾燥重量比)を各調査地で測定した。これらの機能形質は、繁殖特性や光合成能力などの指標として用いられる。調査の結果、ツユクサでは都市化度にそって開花高、葉面積の増加傾向がみられ、ミゾカクシでは開花高、葉面積、SLAの減少傾向、LDMCの増加傾向がみられた。発表では、これらの結果をふまえて都市化の植物への影響について議論する。


日本生態学会