| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-142 (Poster presentation)
サワシロギクAster rugulosus Maxim. には、湿地と蛇紋岩土壌に適応した生態型があり、蛇紋岩型では集団ごとの生態的分化が大きく、この集団分化は播種実験等から蛇紋岩耐性の違いに起因することが明らかになっている。こうした蛇紋岩耐性には、侵入時に土壌環境のような非生物的環境に即応する植物側の生理作用とともに、微生物との間接的な生物的環境の関与も想定される。
そこで非生物的要因として、各生態型における生育土壌の金属濃度を測定したところ、Niの最大濃度(ppm)は湿地土壌で1.3に対し、蛇紋岩土壌Aで75.9、蛇紋岩型土壌Bで25.8と顕著に高かった。これは、0.1 mM (29 ppm)のNi水溶液で蛇紋岩型A集団では7割、蛇紋岩型B集団では5割の個体が子葉展開するのに対し、湿地型集団では0.04 mMでも発芽しなくなる結果と整合する。
一方、生物的環境の差異の影響を調べるために、種子と土壌の滅菌条件を組み合わせた播種実験をおこなった。各生態型の発芽率と本葉展開率は、土壌の滅菌の有無に関わらず差がなかった。しかし、蛇紋岩型Aは自生地土壌にも関わらず、種子の滅菌処理により発芽率が41%から15%と有意に低下した。一方で、ストレス条件の小さい栽培土壌において、種子滅菌による発芽率の低下はなかった。このことから種子内に発芽時に影響する微生物が存在し、悪条件下で効果的に作用すると考えられる。そこで、成長期における植物体の根から微生物を単離、同定したところ、蛇紋岩型Aには成長促進をする細菌であるStenotrophomonas属といった種がみられた。また、AM菌の影響も受けているのではないかと考え感染率を計算したが、蛇紋岩型Aで 46%、蛇紋岩型Bで 42%、湿地型で 48%と差はなく、影響は小さいと考えられる。