| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-144 (Poster presentation)
一般に植物の形態はモジュール(基本構成単位)の繰り返しであり、その成長過程はモジュールの増減、発達と捉えることができる。タケ類においては、地上部は数ヶ月のうちに基本的な構造が形作られ、それ以後、肥大成長・伸長成長しないという特徴を持つ。そのため、地上部の形態は、大きく竹稈・枝系が形成する構造部分と当年枝・葉群系から成る動的な部分によって構成され、その成長過程は、動的部分である葉群モジュールの入れ替えであると捉えることができる。タケ類の成長様式を解明する上で、こうしたタケ類特有の葉群モジュールの形態を明らかにすることは重要と考えられる。
本研究では、タケ類マダケ属の3種(マダケ、モウソウチク、ハチク)を対象とし、葉群モジュールの形態を詳細に調べた。京都府京田辺市同志社キャンパス内の3種の竹林において、林縁に生育する1本について、深度ごと(上部・中部・下部)にそれぞれ1つの枝系を採取し、モジュール数および各モジュールの当年枝長さと葉面積を測定した。そして、深度ごとにモジュール数、モジュールサイズ(当年枝長さ、葉面積)、空間利用効率(枝系空間面積に占める葉群総面積(平均葉面積×総モジュール数))を算出し、各種における葉群モジュールの特徴や空間利用様式について考察した。
その結果、葉群のモジュール総数はモウソウチクで最も多く、ハチク、マダケと続いた。また、当年枝長さと葉面積の関係には3種ともに正の相関があり、その増加率(当年枝長さの増加に対する葉面積の増加)は、マダケで最も大きく、モウソウチクで最も小さかった。
空間利用効率は3種ともに上部で高かったが、この理由は種によって異なっていた。マダケでは個々のモジュールサイズ(当年枝・葉面積)が上部で大きいことが影響していたが、ハチクとモウソウチクではモジュール数が多いことが影響していた。このように種によって空間利用様式が異なることを明らかにした。