| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-147  (Poster presentation)

真正双子葉類の2つの生育型における種分化率・絶滅率・分布拡大率に緯度が与える影響
The effects of latitude on the speciation, extinction and expansion rates in the two growth forms of Eudicots

*香取拓郎(東北大・生命), 小黒芳生(森林総研), 河田雅圭(東北大・生命)
*Takuro Katori(Tohoku Univ.), Michio Oguro(FFPRI), Masakado Kawata(Tohoku Univ.)

 被子植物の「形質、種分化、絶滅、分布拡大」は「気候・地理関係」から様々な影響を受けていることが知られている。また、さらに「形質、種分化、絶滅、分布拡大」の間にも関係があることが知られており、独立した現象ではないことが分かっている。しかし、過去の多くの研究はある二つの変数間の相関関係しか解析してこなかった。例えば被子植物では、種分化率と絶滅率に影響を与える要因として、形質(「木本か草本」など)の影響が検出された。一方、別の研究では気候(気温または緯度)と種分化率・絶滅率の関係は検出されなかった。しかし、被子植物の形質データと分布気候データを両方とも説明変数データに用いて種分化率・絶滅率との関係を統合的に解析した研究はない。今回はそれを明らかにしようと試みた。
 そこでRパッケージdiversitreeに含まれるSSEモデルを使って、気候(低緯度か高緯度)が、各生活型(木本か草本)ごとの「種分化率・絶滅率・分布拡大率・生育型変化率」に対して、与える影響を検証した。解析は被子植物の真正双子葉類から選んだマツムシソウ目とミズキ目を用いて、目ごとに独立に解析した。気候(緯度)、生活型、系統樹のデータは既存の文献やデータベースから引用した。
 種分化率の結果のみを以下に要約する。生活型間の比較では草本のほうが高く、緯度間の比較では緯度による差は小さかった。これらの結果は既存の知見と合致した。しかし、緯度と生活型の組み合わせによる種分化率への影響が存在していることが新たに判明した。草本は低緯度ほど高く、木本は高緯度ほど高かった。すなわち同一生活型で緯度間の種分化率を比較すると、緯度と種分化率は相関していて、さらにその傾きの向きは生活型間で異なっていた。この知見は、被子植物の形質と進化と気候条件の関係性を、これまでよりも統合的に理解する助けとなる。


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