| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-148 (Poster presentation)
被子植物における繁殖様式は、完全自殖から完全他殖まで、また中間的な自殖率を持つ種(混殖種)など、非常に多様である。古典的な理論モデルでは、完全自殖と完全他殖のいずれかが進化的に安定であることを示している一方で、種子植物種のうち約42%が中間的な自殖率(20~80%)であると報告されている。また、最近の研究(Whitehead et al., 2018)は、混殖種において、個体群間で自殖率が大きくばらつくことを報告している。混殖の進化条件やその個体群間変異が生み出される要因については、様々な研究がなされており、送粉環境や個体群サイズ、遺伝構造などの影響が指摘されているが、いまだ統一的な理解はなされていない。
雄性両全性同株の一年生草本であるツユクサ(Commelina communis)は、送粉者の少ない都市域から送粉者の多い里山域まで多様な環境に分布しており、自殖と他殖の両方を通じて種子生産を行う。先行自家受粉(つぼみ受粉)や遅延自家受粉(閉花時、雌蕊と雄蕊が同時に巻き上がり起こる自家受粉)を行うという自殖的な形質を持つ一方で、大きく目立つ青色花弁や雄蕊多型、雄花生産などの他殖を促進する形質も合わせもっている。本研究では、異なる送粉環境に分布するツユクサ個体群を対象に、送粉者の観察や自動的自家受粉の調査、花形質の測定・自殖率の推定を行うことで、送粉環境の差異と自動的自家受粉能力や自殖率、花形質の個体群間変異との関係について検証した。
研究の結果、集団あたりの送粉者量や1日あたりの開花数の違いによって、個花あたりの訪花頻度が個体群間で大きく異なっていることが明らかとなった。また、集団あたりの送粉者が多い個体群では、先行自家受粉による結実率が低くなる傾向がみられた。本発表では、現在解析中である分子マーカーを用いた自殖率の推定の結果も含めて、送粉環境が自殖率に与える影響および自殖率と花形質の関係について議論する。