| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-150  (Poster presentation)

海産緑藻エゾヒトエグサにおけるオルガネラ遺伝パターン
Organelle inheritance pattern in the marine green alga, Monostroma angicava

*吉田航登, 堀之内祐介, 富樫辰也(千葉大・海洋バイオ)
*Kazuto Yoshida, Yusuke Horinouchi, Tatsuya Togashi(Chiba Univ.)

多くの生物でミトコンドリアと葉緑体は片親遺伝する。オルガネラの片親遺伝は、同型配偶から異型配偶への進化に関わっているかもしれない。海産緑藻は同型配偶から様々な度合いの異型配偶を行う種まで現存しているため、異型配偶の進化の研究に適した材料である。海産緑藻のオルガネラの遺伝様式を明らかにすることで、オルガネラの片親遺伝と異型配偶の進化の関係の理解が進む可能性がある。顕著な異型配偶や同型配偶を行う海産緑藻のオルガネラの遺伝様式は分かりつつあるが、わずかな異型配偶では報告がない。そこで本研究ではわずかな異型配偶を行う海産緑藻のエゾヒトエグサに注目した。エゾヒトエグサは、野外で配偶子を放出するタイミング、接合や培養の方法が明らかであり、生活環を回転することができるので、オルガネラの遺伝様式を調べることができる。本研究ではPCR-RFLP法を用いて接合子、胞子体のそれぞれの時期においてミトコンドリアと葉緑体の遺伝様式を調べた。
 ミトコンドリアと葉緑体が消化される時期を調べるために、北海道で採集した雌雄2個体ずつの雌雄配偶体から2種類の接合子を作り、接合後0,1,3,6,12,18,24時間で固定した。また、オルガネラ遺伝様式を調べるために北海道で採集した雌雄4個体ずつの雌雄配偶体から16種類の接合子を作り胞子体に発生させた。雌雄配偶体(親)、接合子(子)、胞子体(子)でPCR-RFLPを行い、バンドパターンを比較した。
 接合後24時間までの接合子ではミトコンドリアと葉緑体は消化されず、両親のオルガネラが残っていることが示唆された。また、胞子体ではミトコンドリアも葉緑体も母性遺伝していることが示唆された。エゾヒトエグサの雄のミトコンドリアと葉緑体は接合後24時間以降に消化され、胞子体に発生するまでに消化されていると考えられる。ミトコンドリアと葉緑体が母性遺伝することは顕著な異型配偶を行う海産緑藻と一致したが、オルガネラが消化される時期は異なった。


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