| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-152 (Poster presentation)
植物の性表現は両性を起源とし、雌雄性の獲得に至る過程において3種類の花の性(両性、オス、メス)の組み合わせが異なる様々な性表現が存在する。一個体内に両性花しか持たない種および性染色体によって雄個体と雌個体に分かれる種以外の種は、一個体内で両性花、雄花、雌花のそれぞれをいつ・どれだけ咲かせるかは環境依存的に決定すると考えられる。一個体内に両性花と雄花を持つ雄性両全性同株であるケツユクサ(Commelina communis f. ciliata)では、一つの花序内で最初に咲く花(以後B1)は両性花であり、B1両性花が結実に成功すれば次に咲く花(以後B2)は雄花に、B1両性花が結実に失敗すればB2は再び両性花になる。このようにB2の性はB1両性花の結実の成否によって可塑的に決定されるが、その性決定機構は明らかでない。
そこで本研究では、B1両性花の結実によりB1子房の発達に資源(窒素およびリン)が分配され、花序内の資源不足がB2を雄花へ誘導するという仮説を検証することを目的とした。ケツユクサの栽培個体を用いて、2018年7月後半から9月後半までの開花期間中、B1両性花の開花直後に強制他家受粉を行った。強制他家受粉のタイミングを基準とし、B2が開花するまでの期間(3日間)に複数回花序を採取した。採取した花序は花柄、総苞、B1子房の3つの器官に分け、それぞれの窒素濃度およびリン濃度を測定した。その結果、B1子房へ窒素およびリンが分配されていたが、B2の性が決定するB1両性花の開花から24時間までに花柄と総苞で窒素濃度およびリン濃度のどちらも減少せず、B1開花時より増加する傾向が見られた。このことから、B1両性花の結実には花序外からの資源供給が存在することが示唆され、花序内の資源(窒素およびリン)制限がB2を雄花に誘導するという仮説は支持されなかった。