| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-153  (Poster presentation)

スベリヒユにおける花生産の二型性:開放花型と閉鎖花型の発見
Dimorphism of flower production in Portulaca oleracea:discovery of chamogamous type and cleistogamous type

*古川知代, 板垣智之, 酒井聡樹(東北大学大学院)
*Tomoyo FURUKAWA, Tomoyuki ITAGAKI, Satoki SAKAI(Touhoku Univ.)

虫媒花の花には開放花と閉鎖花という二種類の形態がある。多くの閉鎖花性の種は個体内に開放花と閉鎖花の両方を生産する。そして、環境条件によって可塑的にそれらへの投資量を変えることで、資源やポリネーター量が変動する環境に適応しているとされてきた。しかしながら、開放花と閉鎖花の生産量の変異は可塑性のみによってのみもたらされるものではなく、環境条件の大きく異なる集団間では、遺伝的な変異も生じうるのではないだろうか。本研究では、スベリヒユにおいて、気象条件に対応して、開放花・閉鎖花生産が遺伝的に分化しているかどうかを明らかにした。

1)生育地の気象条件によって花生産がどのように異なるのかを調べるために、中部-東北地方の16集団から実生を採集し2つの温度条件下で栽培して花生産を観察した。
2) 各個体の花生産が遺伝するかを調べるために、1)の実験由来の種子を撒き花生産を観察した。

開放花のみを産する個体(開放花型)と閉鎖花のみを生産する個体(閉鎖花型)が観察された。そして、開放花型・閉鎖花型の子個体は全て開放花型・閉鎖花型となったことから、花生産は遺伝し、スベリヒユには花生産の異なる二型があることが示唆された。気温の低い地域ほど閉鎖花型の出現率が高かった。閉鎖花型は開放花型よりも早くに繁殖を開始する傾向にあることから、花期が短いために早く繁殖することが求められる気温の低い地域で有利になるのかもしれない。反対に、開放花の開花率は低温条件で下がったことから、開放花型は、気温の低い地域では他殖の可能性が低いために不利になる可能性が考えられた。本研究によって、スベリヒユでは、気象条件に対応して花生産が遺伝的に分化している可能性が示唆された。


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