| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-154  (Poster presentation)

カツラとヒロハカツラの種子散布時期と発芽特性の違い
Difference of seed production and germination traits of Cercidiphyllum japonicum and Cercidiphyllum magnificum

*鹿島拓也, 久保満佐子(島根大学)
*Takuya KASHIMA, Masako Kubo(Shimane Univ.)

 カツラ科カツラ属には二種一変種があり,日本列島には山地帯の渓畔域に分布するカツラと亜高山帯の河辺域に分布するヒロハカツラがある。両種とも袋果の中に翼を持つ6 mmほどの小型の風散布種子を形成し,カツラは毎年10月から散布種子数が多いことが確認されているが,ヒロハカツラについては明らかではない。また,両種子の発芽力の違いも明らかではない。そこで本研究では,異なる温度条件で発芽実験を行うことにより温度に対する両種の発芽特性の違いを明らかにするとともに,種子散布時期の違いを明らかにする。
 調査地は秩父多摩甲斐国立公園に位置する大山沢渓畔林である。標高1400mに生育するカツラの雌3個体と標高1600mに生育するヒロハカツラの雌4個体に各10個のリタートラップを2017年11月下旬に設置した。2018年4月,9月,10月,11月の各下旬にリターを回収し,両種の種子数と袋果数,落葉量を測定した。発芽実験は,2018年4月に回収した種子を用い,10 ℃,15 ℃,20 ℃,25 ℃,30 ℃の5つの温度条件で発芽数と実生数を一ヶ月調べた。
 カツラとヒロハカツラともに落葉量は10月に最も多かったが,種子数はカツラが11月,ヒロハカツラが10月に最も多かった。種子は,ヒロハカツラは袋果に含まれている種子が約半分を占めるのに対し,カツラは袋果に含まれず種子単体で散布されている方が多かった。さらに,カツラの袋果は,4月から8月に未熟の袋果や前年の袋果を落としていた。このため,カツラは袋果を枝につけたまま冬の間種子を散布するのに対し,ヒロハカツラは秋までに種子を含んだ袋果を落としていた。発芽実験では,両種ともに25℃で発芽数,実生数が最も多く,発芽率はカツラが47.7%,ヒロハカツラが11.0%であった。しかし,ヒロハカツラの種子散布時期が10月であったため,利用した種子が未熟だった可能性もあり,これに関しては今後明らかにする必要がある。


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