| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-155  (Poster presentation)

同所的に生育するエゾイソツツジとヒメイソツツジの繁殖・形態特性の比較
Comparisons of reproductive and morphological traits between sympatric Rhododendron diversipilosum and R. subarcticum

*塩谷悠希(北海道大学)
*Yuki SHIOTANI(Hokkaido Univ.)

近縁種が同所的に生育しているとき,種間競争や生殖干渉を緩和するメカニズムが,各種個体群の維持に大きく作用する.
北海道の高山帯では,近縁なエゾイソツツジとヒメイソツツジが同所的に生育している場所がある.しかしエゾイソツツジは亜高山帯から高山帯にかけて広く分布するのに対し,ヒメイソツツジは高山帯の風衝地にのみ生育するという違いがある.本研究では,両種が分布する大雪山系の4山域で形態・繁殖特性を比較し,共存メカニズムと種間相互作用を解明することを目的とした.
両種が生育する風衝地,エゾイソツツジのみが生育する高山帯低木群落と亜高山帯の3つの場所で,(1)葉,枝,花の形態比較,(2)他家受粉,自家受粉,袋掛け,種間交雑の受粉実験,(3)室内での発芽実験を行った.
(1)形態観察から,エゾイソツツジは亜高山帯,低木群落,風衝地の順にLMA,葉の平均寿命が増加し,シュート成長量,葉と花の生産量は低下した.また,ヒメイソツツジはそれらより高いLMAと葉の平均寿命を示した.以上より,エゾイソツツジは高標高で生育が抑制されていることが示唆された.(2)受粉実験の結果,両種ともに自家受粉で結実率が低下した.種間交雑処理では,エゾイソツツジにヒメイソツツジの花粉を授粉させてもほとんど結実しないが,ヒメイソツツジにエゾイソツツジの花粉を授粉させると高い結実率だった.以上より,両種が自家不和合性であることと,種間で非対称的な生殖隔離が起きていることが示唆された.(3)発芽実験では,ヒメイソツツジのみ低温で低い発芽率を示した.また,F1雑種の種子は発芽能力が非常に低かった.以上より,ヒメイソツツジはエゾイソツツジの生殖干渉を受けやすく,エゾイソツツジの分布末端部である風衝地のみに分布している可能性が示された.


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