| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-158  (Poster presentation)

キバナアキギリの花序内での開花順とその適応的意義:訪花者の行動への影響の解析から
Adaptive significances of flowering order within inflorescences in Salvia nipponica: effects on pollinator foraging behavior

*村越法子, 板垣智之, 酒井聡樹(東北大学)
*Noriko MURAKOSHI, Tomoyuki Itagaki, Satoki Sakai(Tohoku Univ.)

多くの植物は、複数の花からなる花序をもつ。これによってポリネーターの誘引が高まるといった有利な効果がある一方で、隣花受粉のリスクが高まるという不利益も被っている。隣花受粉は、ポリネーターの連続訪花数が多いときに起きるため、連続訪花数を下げる戦略が進化してきたと考えられている。シソ科のキバナアキギリは垂直型花序を持ち、花序内の花がランダムな順番に開花する傾向がある。そのため、開いている花間に間隔が生じる。これは、花間の移動コストを高くすることにより、花序内での連続訪花を減らす戦略であろうか。本研究では、キバナアキギリへの訪花行動観察を行い、開花間距離がポリネーターの採餌行動に及ぼす影響を解析した。
【方法】キバナアキギリ個体の同時開花数、各花の開花位置を記録した。主なポリネーターであるマルハナバチの訪花行動をビデオで記録し、1訪問あたりの花序内連続訪花数および一花あたりの滞在時間を記録した。これらのデータを用いて、平均開花間距離および花序内開花数が、その花序内での連続訪花数および一花あたりの滞在時間に与える影響を一般化線形混合モデルで解析した。
【結果】花序内開花数が少ないほど、また、平均開花間距離が長いほど連続訪花数が減少していた。一方、花序内開花数が少ない場合には、平均開花間距離に応じて滞在時間は変化しなかったが、花序内開花数が多い場合には、平均花間距離が長いほど滞在時間が長くなった。以上のことから、開花間距離を長くすることで連続訪花数を減少させて、隣花受粉の起きる可能性を緩和していると考えられる。花序内開花数が多い場合、開花間距離が長いほど滞在時間も長くなっているが、その影響は不明である。


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