| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-163  (Poster presentation)

完全寄生植物ヤセウツボの最適な成長ー物質分配モデルの観点からー
Optimized growth of holoparasitic plant, Orobanche minor: From a perspective of allocation model

*吉鴻一, 寺島一郎, 種子田春彦(東京大学)
*Koichi YOSHI, Ichiro Terashima, Haruhiko Taneda(Tokyo Univ.)

完全寄生植物(以下寄生植物と呼ぶ。)は、宿主となる植物の根に寄生し、水、炭水化物、無機塩類、といった生育に必須な要素を全て収奪する植物である。
今回、寄生植物の生態的な成長様式を明らかにするため、資源の分配モデルを用いて寄生植物の最適な成長スケジュールを解析した。このモデルでは葉と根から成る1年生宿主植物の根に、1年生寄生植物が寄生する。宿主植物は葉と根を作る栄養成長のあとに、生殖器官を作る繁殖成長をおこなう。宿主植物は、葉面積、葉窒素濃度に依存する純光合成速度、葉量によって炭素を得て、単位時間あたり単位根量あたりの窒素吸収速度、根量によって窒素を得る。寄生植物は、宿主植物が栄養成長期間中、宿主植物の根に分配される炭素と窒素を一定の割合(収奪率と呼ぶ。)で収奪して成長する。また、宿主植物が繁殖成長期間中、宿主植物の生殖器官に分配される炭素と窒素を一定の収奪率で収奪して成長する。
生殖器官が最大化するように成長する宿主植物に、異なる成長開始日数と収奪率を持った寄生植物を寄生させたところ、寄生植物の個体重が最大化する成長開始日数と収奪率の組み合わせが存在した。その条件は宿主植物の成長後期に寄生を開始し、収奪率1ですべての資源を収奪する場合だった。さらに、数理モデルから推測された寄生植物の最適成長戦略が、実際の寄生植物で達成されているか調べるため、寄生植物ヤセウツボ(Orobanche minor)が寄生するムラサキツメクサ(Trifolium pratense)に炭素安定同位体¹³Cを吸収させ、ムラサキツメクサに対するヤセウツボへの相対的な移動量から収奪率を定量した結果も示す予定である。


日本生態学会