| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-164  (Poster presentation)

鉱山跡地に定着したミネヤナギにおける内生菌の関与した重金属耐性機構の解明
Elucidation of heavy-metal tolerance mechanism in Salix reinii growing in mine site, considering the interaction with root endophytes

*伊藤汰一(筑波大学・生命環境), 春間俊克(筑波大学・生命環境), 正木悠聖(JOGMEC), 升屋勇人(森林総合研究所), 山路恵子(筑波大学・生命環境)
*Taichi Ito(Univ. of Tsukuba), Toshikatu Haruma(Univ. of Tsukuba), Yusei Masaki(JOGMEC), Hayato Masuya(FFPRI), Keiko Yamazi(Univ. of Tsukuba)

 α鉱山はかつて硫黄鉱山として採掘され、現在は閉山されている。閉山以降、覆土処理などを行い緑化復元が行われているが自然植生回復にはまだ時間がかかるという現状にある。ミネヤナギ(Salix reinii Franch. et Savat)はヤナギ科の落葉低木種で、調査地である鉱山跡地に侵入木本種として広く分布が確認されている。また近年、植物と共生する内生菌が、重金属と錯体形成するシデロフォアを産生することで重金属を無毒化し、植物の重金属耐性を増強することが知られている。本研究の目的は、鉱山跡地で繁茂するミネヤナギの根から内生菌を分離し、重金属耐性機構を植物および内生菌の機能の点から解析することで、ミネヤナギが鉱山跡地での定着に成功した要因を明らかにすることである。
 堆積場の跡地から、2017年8・10月にミネヤナギの葉、茎、地下茎、細根、根域土壌を採取し酸分解処理後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて含有元素濃度を測定した。根に含まれる重金属解毒物質は、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。また、表面を滅菌した根をmalt extract培地に置床することで内生菌を分離した後、根に高濃度で検出されたAl及びFeと錯体形成するシデロフォア産生能を評価した。
 その結果、ミネヤナギは細根に高濃度のAl及びFeを蓄積していることが判明した。細根にはフェノール性化合物である2種類のカテキン類縁体と縮合タンニンが高濃度で含有されており、重金属耐性に関与している可能性が示唆された。またミネヤナギの細根から、高いシデロフォア産生能を示すPezicula sp. が高頻度で分離された。今後は、ミネヤナギが多く含有するカテキン類縁体の化学構造を明らかにするとともに、Pezicula sp. が産生するシデロフォアの同定を行う。さらに内生菌との相互作用を明らかにするため、接種試験を行う予定である。


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