| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-173  (Poster presentation)

土壌窒素及び炭素濃度に着目したヒノキ細根系の次数形態の変動
Variation in morphology of fine root system by branching order in Chamaecyparis obtusa focused on nitrogen and carbon in soil

*土居龍成(名古屋大学), 谷川東子(森林総合研究所), 平野恭弘(名古屋大学)
*Ryusei DOI(Nagoya Univ.), Toko Tanikawa(FFPRI(Kansai)), Yasuhiro Hirano(Nagoya Univ.)

 樹木細根(直径2 mm以下の根)は土壌環境の変動に敏感な器官であるため、その形態は可塑的である。また高い生理活性を持つ細根は、土壌中の養水分を吸収・輸送する役割を持ち、養水分吸収能力の高い吸収根、吸収した養水分を樹幹へ輸送する能力の高い輸送根に分類される。本研究の目的は、窒素及び炭素濃度の異なる土壌における直径2 mm以下全体のヒノキ(Chamaecyparis obtusa)細根系の次数形態の変動特性を明らかにすることとした。
 東海地方に生育するヒノキ3林分(幸田、三ヶ日、二本木)に設置された10 m ×10 mのプロット内において根端を含む直径2 mm以下全体の無傷なヒノキ細根系及び土壌を各林分4点採取した。細根系は分岐構造を示す次数(最末端の根を1次根、1次根同士の接合点からの根を2次根)に基づき分類され、形態特性(直径、根長)の解析を行った。その後、次数ごとの乾重を測定し、細根形態指標であるSRL(Specific Root Length)を算出した。また、土壌の全炭素及び全窒素濃度、無機態窒素濃度を測定し、細根の次数形態特性との相関を調べた。
 直径2 mm以下のヒノキ細根系の最高次数は5~7次根であり、1~7次根全体の総根長、総乾重、SRLの平均はそれぞれ920 cm、0.622 g、16.1 m/gであった。また、1~3次根、1~5次根、1~7次根はそれぞれ直径0.5、1、2 mm以下の細根系と対応することが明らかとなった。1次根から7次根、2次根から7次根までの順に6次根から7次根までそれぞれの根系全体のSRLと土壌炭素濃度との間には全て有意な正の相関が認められ、特に4次根から7次根全体のSRLにおいては全炭素、全窒素ともに相関が認められた。このことから直径2 mm以下全体のヒノキ細根系のうち直径0.5~2 mmにあたる4~7次根と直径0.5 mm以下の1~3次根では土壌炭素に応じて異なる形態特性が示唆された。細根の次数形態特性と無機態窒素との関係性も含めて、直径2 mm以下全体の細根系形態の変動を考察していく。


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