| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-178  (Poster presentation)

低木層の樹木の樹形・葉の形質と光環境の関係
Crown structure and leaf traits of 35 understory species across various light environments

*中田貴子(筑波大・院・生命環境), 廣田充(筑波大 生命環境系)
*Nakada Takako(Univ. of Tsukuba, Mt. Studies), Mitsuru Hirota(University of Tsukuba)

葉の形質と樹形は、樹木の光獲得を決定する重要な要素である。林冠木を対象とした既存研究では、樹木によって光環境に応じて葉の形質や樹形が異なり、各種の光獲得に大きく影響することが報告されている。一方、より暗く厳しい林床を生き抜く低木層の樹木については、葉の形質や樹形が光獲得にどのように関わっているのか、明らかになっていない。本研究では、低木層の光環境に対する応答が樹木の生存にとって重要であると考え、常緑・落葉性と耐陰性が異なる35樹種を対象に、それぞれの光環境と葉の形質および樹形の関係を調査した。本州の温帯に位置する6つの二次林において、低木層(樹高2-5 m)の35樹種を対象に、各個体の樹上の相対光強度(RPFD)、樹冠頂部の葉の比葉面積(SLA)、葉内窒素量(Narea)、樹冠長、樹冠面積を調べた。まず、各種の平均RPFD、葉の形質、そして樹形から、生育光環境に応じて葉の形質と樹形がどのように応答するか調べた。その結果、葉の形質であるSLAがRPFD10%において高く、NareaがRPFD20%において低くなる一山形の分布を示した。一方、樹形ではそのような明確な傾向が見られなかった。これらの種を常緑・落葉性と耐陰性のタイプで分けてみると、落葉性陽樹と落葉性陰樹はRPFDが1~100%の広範囲に分布するのに対して、常緑性陰樹はRPFDが1~10%の狭くかつ暗い範囲に分布していた。これらの結果から、低木層の樹木はタイプによって異なる光環境に分布し、そのタイプ毎に異なる葉の形質と樹形であることがわかった。さらに、タイプ毎に相対光強度と葉の形質・樹形の関係を調べたところ、タイプ毎にそれらの関係が異なることが分かった。このことから、各タイプの低木層の樹木が明るい環境と暗い環境で異なる光獲得戦略を取っていることが示唆された。本研究の結果から、低木層の樹木にとって葉の形質と樹形は厳しい光環境に適応するために重要な形質であることが示唆された。


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