| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-211  (Poster presentation)

甲虫体色の適応進化-3Dプリンタ模型を用いた警告色の検証-
Warning coloration affecting predetor selection using 3D printing model of the ground beetle

*福田真平, 小沼順二(東邦大学)
*Shinpei FUKUDA, Junji KONUMA(Toho University)

甲虫の多くが黒色や茶色の地味な体色である一方、いくつかの分類群では体色が多様化している。オサムシ科のマイマイカブリ Damaster blaptoides は異所的に体色の多型があり、東日本では頭部と胸部が赤、緑、青などの鮮やかな体色の亜種が分布している。また、本種は酸性の防御物質を噴出することで外敵から身を守っていると考えられる。本研究では、鮮やかな体色が捕食者に対して警告色であるという仮説の検証をした。
上記の仮説を検証するために、3Dプリンタを駆使し、ナイロン素材で、四肢と触覚を持つ、実寸大の甲虫模型を作製した。3Dプリンタ模型を野外生態実験において用いた研究は非常に少ない。そのため、動物が模型を餌として認識しているのかセンサーカメラを使ったカメラトラップ調査で確認した。次に、2017年4月から2018年10月にかけて、捕食者の攻撃頻度を比較する比較実験を行い、模型の体色の違いによって攻撃率に差があるかを調べた。本実験は黒色のマイマイカブリが分布する西日本と赤色のマイマイカブリが分布する東北南部地方で行われた。カメラトラップ調査の結果、5種の哺乳類と3種の鳥類が観察された。なかでも、タヌキ、イノシシなどは模型を直接攻撃していた。野外での比較実験の結果、赤色のマイマイカブリが分布している地域では、赤い模型への攻撃率が低いことが明らかになった。以上のことから、甲虫の赤い体色は哺乳類や鳥類に対する警告色である可能性が高い。


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