| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-228  (Poster presentation)

食性に対応した頭部形態の地理的変異-本土と伊豆諸島におけるシマヘビ個体群の比較-
Geographic variation in head morphology among the mainland and Izu Islands populations of the snake, Elaphe quadvirigata, with different food habits

*永井智也, 伊藤舜, 長谷川雅美(東邦大学)
*Tomoya NAGAI, Shun Ito, Masami Hasegawa(Toho Univ.)

 生物の形態は行動、適応度と密接に関係しており、これらの関係性を明らかにすることで自然選択の測定が可能であるとされている。手足のないヘビ類にとって頭部形態は採餌生態に関係する重要な形態であり、食性に対して適応的に進化していると予想される。本研究ではシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)を対象として、頭部形態のどの部位が適応度(肥満度、妊娠の有無)にどの程度貢献しているのか分析した。
 調査は伊豆半島の水田地帯で行い、胃内容物、頭胴長、体重、そして頭部形態は頭長、頭蓋骨長、頭幅、最大頭幅、頭高、眼の大きさ、両目の距離、吻端長、吻端板の幅、上顎、下顎、方形骨の13ヶ所を測定した。頭蓋骨長に対する各頭部形態のアロメトリーから標準化した各頭部形態の値を算出した。さらに頭胴長に対する体重のアロメトリーを作成することで、肥満度を算出し、肥満度に対する標準化した各頭部形態の関係を回帰分析した。伊豆半島の個体群はトノサマガエル(Pelophylax nigromaculatus)を餌生物として約9割利用していた。しかし、頭部形態と適応度の関係は、年によって異なり、2011‐2012年には頭幅、最大頭幅、頭高、両目の距離が肥満度と正の相関を示したが、2018年では頭部形態による肥満度差は検出されなかった。今後、食性の異なる個体群間で同様の解析を行うとともに、形態的特徴と餌の呑み込み行動の効率性との関係を調べ、形態と機能と適応度の関連性を明らかにする予定である。


日本生態学会