| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-274 (Poster presentation)
維管束着生植物(以下,着生植物)は,主に熱帯において観察される植物生活形の一つであり,生物多様性に大きく貢献するキーストーン要素として知られている.しかし,着生植物の生態に関する先行研究の多くは新熱帯で行われており,特に東南アジア熱帯では着生植物の生態に関する研究はほとんど行われて来なかった.
本研究では,ボルネオ島の熱帯低地林に位置するランビル国立公園にて,着生植物の樹上空間の分割様式を明らかにすることを目的とした.林冠上層に達する樹高30m以上の樹木(以下,宿主木)98個体に接近し,宿主木を主幹基底部,主幹下部,主幹上部,林冠内部,林冠中部,林冠外部の6ゾーンに分け,各ゾーンに出現した着生植物について,種名,個体サイズ,個体数を記録した.また,ハビタットの属性として,宿主木の種名と樹高,寄生植物とつる植物の個体数と被度,ゾーンの地上高,ゾーンで優占した基質の種類を記録した.
調査の結果,98本の宿主木から21科,49属,119種からなる2024個体の着生植物が観察された.着生植物の種数と個体数はいずれも宿主木のDBHや樹高との間に有意な相関を示さなかった.着生植物の種数は、宿主木の種間で大きく異なっており,地上付近や主幹部の3つのゾーンに比べ林冠部の3つのゾーンで顕著に高かった.群集構造を解析した結果,6つのサブ群集が認められ,それらは宿主木サイズ,宿主木種,着生基質の種類,寄生植物やつる植物の在不在によって区分されることが示された.当地域の着生植物は,地上からの高さによってハビタットを分割しているのではなく,宿主木個体によって異なる様々なハビタットの属性によって規定されていることが示唆された.この結果は,地上高に沿って明瞭なハビタット分割を示す熱帯アフリカや南米の低地林の着生植物群集とは大きく空間利用様式が異なることを示している.