| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-277 (Poster presentation)
山地の植物において、種の豊富さ(species richness)は中標高域で最大となることが多い。低地と比べて気温が低く、面積も狭い中標高域に種数のピークが見られる理由は長らく未解決である。本研究では、ベトナム南部の225 m~1905 mまでの標高勾配に沿った植物種の多様性の変化を記述し、主要なグループ間のパターンを比較することによって、中標高域に種数のピークが見られる理由を考察する。Bi Doup Nui Ba国立公園及びHon Ba自然保護区の常緑林において、5 m×100 mのトランゼクトを標高が異なる12地点に設置し、区画内に出現した高さ4 m以上の木本植物の種数・属数を決定した。その結果、種数・属数はともに、1200 m付近で最大となった。一方、科ごとに種数・属数の変化を調べた場合、マメ科では600~800 m、トウダイグサ科では900 m付近、クスノキ科では1200 m付近、ブナ科では1500 m付近で科によって種数・属数が最大となった。
このことから、属数が多い標高帯で、種の多様化が起こりやすいことが考えられる。また、植物種の多様化が起こりやすい場所や条件は主要なグループごとに異なっており、多様性形成のプロセスをグループごとに分けて解析する重要性が示された。さらに、分類群全体で1200 m付近で見られる種数のピークは、異なる標高でピークとなる複数の凸形のパターンが重なることで起こる中領域効果(mid-domain effect)によって説明されることが示唆された。