| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-279  (Poster presentation)

花三次元形態モデルのオントロジーによる制御 【B】
Ontological control of floral 3D-morphological model 【B】

*Shiryu KIRIE(Univ. Tokyo), Koji Noshita(Kyushu Univ.), Hideo Iwasaki(Waseda Univ.), Hiroyoshi Iwata(Univ. Tokyo)

本研究ではスイレンの花の三次元形態モデルを作成し、オントロジによる形態モデル制御を試みた。研究対象として,モネの絵画にも縁深い19世紀のフランスで作出されたスイレンの品種群を用いた。本研究では美的選抜 (aesthetic selection) による園芸花卉の花形態の変遷過程を定量解析から明らかにすることを目的としている。

被子植物の生殖器官である花はさまざまな器官から構成される複合的かつ立体的な構造をとっており、形態の定量的解析は容易ではない。そこで、これまでに理論形態学 (theoretical morphology) の立場からスイレンの花の形態的特徴を階層的にパラメタ化したモデルを構築し、それぞれの階層の特徴をモデル上で統合するフレームワークを開発してきた。一方、このアプローチではパラメタの数が膨大になり形態空間を探索する上で効率が悪い。また、カタログ等の文献に記載されている定性的な記述との対応が取りづらく、アーカイブの記述との整合性を確かめるための明示的な規約が必要であった。

これらの問題を解決するために、花形態のオントロジを用いて三次元形態を制御することを検討した。オントロジとは事物の概念と概念間の関係を形式的に定義したものである。今回の発表では花の「開花状態」について扱い、ある花の蕾から満開までの様相を扱うための概念的図式を提案する。これにより三次元形態モデルの異なる開花状態をある概念体系に基づいて変化させることが出来、形態空間において形態変化の「意味」を関連付けることが容易になった。今後は花型や形態変異についての概念についても検討していきたいと考えている。本手法はスイレンに特化したモデルであるが、他種の花や花以外の器官にも応用が可能であろう。


日本生態学会