| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-281 (Poster presentation)
分布域の広さや絶滅リスクの低さ、すなわち、生物の繁栄の程度は、生物種間で大きく異なる。このような種間差を生み出す要因を特定することは、生態学や進化学における中心的な議題の一つである。これまでの研究で、食性や繁殖能力、分散能力などの形質が種の繁栄の程度に影響を与えることが指摘されてきた。一方で、体色の多型という種の特徴も、種内でのニッチ分化を通じて資源競争や捕食リスクなどを緩和することで個体群の安定性や密度を高め、結果として種の分布域を拡げたり絶滅確率を低減することが示唆されている。しかし、体色の多型と分布域の広さや絶滅リスクとの関係についての解析の多くは、特定の地域の生物種を対象にし、また、色彩多型以外の形質や系統の影響を考慮しておらず、体色の多型と種の繁栄の程度の関連性については十分な検証がなされたとは言い難い。そこで、本研究では、全球スケールでの系統種間比較により、体色の多型が分布面積や絶滅リスクなどに与える効果を検証することを目的とした。解析には、種レベルでの生活史形質や分布に関するデータが充実し、ほぼ全種についての系統関係が明らかにされている鳥類を用いた。目的変数には種の分布面積や気温幅、降水量幅などを分布の広さの指標として、絶滅リスクと個体群の傾向を集団の安定性の指標として用いた。説明変数として、多型の有無に加え、体重、世代時間、食性などの形質、さらに系統関係を考慮した重回帰分析を行なった。その結果、多型種のほうが単型種よりも分布環境幅が広く、集団の安定性が高いことがわかった。多型の有無が集団の安定性にも正の効果を与えていることから、多型の獲得が要因となり、分布幅環境幅の拡大と集団安定性の向上を促したことが強く示唆された。