| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-284  (Poster presentation)

植生構造が炭素蓄積量に及ぼす影響:日本の暖温帯里山林の事例
Influence of vegetation structure on carbon stocks : A case study in warm temperate satoyama forest in Japan

*菅井暁乃, 大橋瑞江(兵庫県立大学)
*Akino Sugai, Mizue Ohashi(University of Hyogo)

 森林は複雑な階層構造を持ち、棲み分け場所が豊富に存在するために他の生態系に比べて生物多様性が高い。一般に生物多様性は、様々な生態系サービスを提供し、その一つに炭素の吸収および蓄積があると考えられている。したがって森林の高い生物多様性は、高い炭素蓄積能力をもたらし、森林は地球温暖化防止に大きく貢献していると予想されてきた。しかし、森林のバイオマスと生物多様性との間には必ずしも正の関係は認められず、両者の関係性を理解するためには、様々な森林を対象に、バイオマスと生物多様性を制御する要因を明らかにし、生物多様性が炭素蓄積をもたらすに至るメカニズムを理解する必要がある。日本に広く存在する里山は、適度な人為的かく乱により、原生林に劣らず生物多様性が高いといわれている。そのため、高い生態系サービスを持つとされ、里山保全が唱えられてきたが、里山の炭素蓄積量と生物多様性の関係を明らかにした例はこれまでない。そこで本研究では、広葉樹を主体とする里山林において、(1)種数を用いた生物多様性評価、(2)地上部現存量推定による炭素蓄積量評価、(3)多様性と現存量との相関関係の評価、を行い、生物多様性と炭素蓄積量の関係に影響を与える要因について理解することを目的とした。
 調査地は、兵庫県姫路市の自然公園に生育する広葉樹二次林である。10m×10mのサイズのプロットを10か所設け、過去の撹乱の有無によって、撹乱あり6プロットと、撹乱なし4プロットに分けた。2017年、各プロットにおいて各層の種数、優占種、層の高さ、植被率、出現種、被度%を測定した。さらに毎木調査を実施し、出現種、胸高直径、樹高のデータから地上部現存量の推定を行った。
 各プロットの種数は、18種から39種まで変化した。一方、地上部現存量は、40.7t ha-1から171.2t ha-1の範囲であった。両者の間には関係性は見られず、原因として、撹乱の有無や高木層の樹種組成が関与していると予想された。


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