| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-286 (Poster presentation)
共通の資源を利用する多種間で働く共存機構は多岐にわたり、それらが同時に働く状況もあるため、野外群集に適用できる共存機構の評価方法は安定化メカニズム(種間競争よりも種内競争が強くはたらく)と等質化メカニズム(平均適応度の種差が小さいことではたらく)の相対強度を明らかにすることである。両メカニズムの相対強度は、種間の個体群動態の同調性で評価することができ、安定化メカニズムの相対強度が大きい群集では、種間の個体群動態が非同調になる。また、安定化メカニズムの相対強度は、環境ストレスが増加するほど低下すると考えられ、岩礁潮間帯では高度ともに安定化メカニズムの相対強度が低下することが判明したが、その詳細なメカニズムの変化については未解明である。
加入ニッチや遷移ニッチの種差が大きい群集では、安定化メカニズムの相対強度が増加すると予想される。なぜなら、加入するタイミングが異なる種間では、時間的ストレージ効果によって、遷移初期種と遷移後期種との間では、住み着き能力と競争能力のトレードオフによって安定共存が可能だと考えられるからである。
そこで、本研究では岩礁潮間帯における安定化メカニズムの相対強度の高度に沿った変化が遷移ニッチおよび加入ニッチの種差によって生じたという仮説を立てた。
この仮説を検証するため、北海道東部の太平洋沿岸の25岩礁に設置した永久方形区の長期センサスから得た固着生物の時系列データを用い、種間の個体群動態の非同調性の強度とその統計学的有意性を算出し、それらの値の遷移ニッチの種差、加入ニッチの種差および高度による影響をについて解析した。本発表では、この解析結果について報告する。