| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-290 (Poster presentation)
管住性ハチ類は竹筒などの既存孔に営巣するハチ種のことを指す。このハチ種は種によって営巣時に利用するエサ資源や育房材料が異なっており、繁殖にはそれらの資源が営巣場所の周囲に揃っている必要がある。この管住性ハチ類の調査には竹筒トラップが有用とされており、このトラップを用いた環境評価の開発の試みが行われてきた(須賀ら、2001)。しかし、環境評価を行う上では竹筒トラップを仕掛ける調査場所の増加は必要不可欠である。そこで本研究では高知大学が所有する演習林に竹筒トラップを仕掛け、人工林と天然林が混在する環境での管住性ハチ相の解明を試み、また、演習林での樹林面積が管住性ハチ類にどのように影響を及ぼしているかを調査した。調査地となる演習林は標高が約700m以上の針葉樹林と広葉樹林が混在する環境である。演習林は西団地と東団地に分けられており、広葉樹林面積は東団地の方が西団地より広い。両団地の林道沿いに竹筒トラップを合計40基仕掛け、2018年5月から10月に月に1〜2回営巣の終わっている竹筒トラップを回収し、竹筒内のハチ幼虫を成虫まで飼育しこれを同定した。演習林では5科11種の管住性ハチ類が確認された。特に西団地及び東団地の全ての地点でアナバチ科のキバネアナバチの営巣が最も多く確認され、全体の67.0%を占めていた(n=440)。また、それぞれの種を資源の組み合わせで分類した場合、西団地では4、東団地では6の資源グループの出現が確認された。花粉をエサ資源とするグループと葉片を育房材料とするグループは東団地のみで出現した。これらのことから、演習林ではキバネアナバチが優占種となっており、キバネアナバチ以外の種は広葉樹林の多い東団地に出現している傾向があった。