| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-296  (Poster presentation)

ビーズアレイとSfM法による大型哺乳類の種内変異解析
Intraspecific variation analyses on large mammals using Bead array and SfM photogrammetry

*Hiroshi AKITAYA, Chisato TERADA, Takashi SAITOH, Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.)

動物の頭部形態は行動や生存に深く関わり、適応進化において重要な形質である。そのため形や大きさの違いに強い関心が払われ、頭部形態の変異には強い遺伝的基盤があることが分かってきている。しかしそれらの知見は、マウスやイヌなどの一部のみであり、野生動物、特に大型の哺乳類における頭部形態変異とその遺伝的基盤の理解は非常に乏しい。背景には、頭部での形の定量評価の難しさと、ゲノム情報の不足という2つの課題が挙げられる。そこで、本研究は、形態評価とゲノム情報のそれぞれで新しい方法論によって、ニホンジカの形態の種内変異をより深く評価することを目的とした。形態解析のためには、写真測量法を用いた三次元モデルによるフェノタイピングを行った。ゲノム解析のためには、高密度SNPアレイの応用による大規模ジェノタイピングを行った。そして、この両者を結びつけるためにアソシエーション解析 (GWAS)を行った。材料には、南日本のニホンジカ集団の個体を使用した。
 まず、三次元モデルを構築し、頭骨を直接計測した実測値とモデル上の値で回帰分析を行ったところ、モデル精度が高いことが分かった。次に、モデルの重ね合わせと最近傍距離分析によって形の変異が生じる部位を探索すると、屋久島や対馬の個体で、鼻先や頬に形の差異がある事が示唆された。そして、モデルから水平面輪郭を抽出して楕円フーリエ解析を行ったところ、これらの部位を中心として雌雄間・集団間で有意な形態変異があることが分かった。
 SNPアレイによるジェノタイピングでは、4473個の遺伝子座で多型を示した。集団構造を確率的主成分分析により確認すると、各集団の遺伝的分化が明瞭に示された。最後に、多型を示したSNPと形態の間でGWASを行ったところ、有意に関連を示すSNPマーカー候補が検出された。以上の結果から、本研究で試みた解析は、野生動物における形態変異とその遺伝的基盤の解明を進める上で有効であることが分かった。


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