| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-300  (Poster presentation)

地方都市の緑地におけるアリ類群集による生物多様性評価
Evaluating biodiversity of greenery spaces in local cities using ant communities

*植野侃太朗, 大窪久美子(信州大学農学部)
*Kantaro UENO, Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

近年、都市の孤立緑地における生物多様性の低下が課題となっており、その中でもアリ類を環境および生物多様性評価の指標種として用いた研究が行われている。しかし、地方都市におけるアリ類群集の知見や本分類群を環境および生物多様性評価の指標とした研究は少ない。そこで、本研究では比較的、里地里山の自然風景を残す上伊那地方における異なる立地条件の緑地において、アリ類群集を明らかにすると共に、移動能力が低く、環境選好性が高い本分類群を指標とした環境および生物多様性の評価を行うことを目的とした。調査地は上伊那地方に含まれる伊那市・駒ヶ根市において緑地の面積と森林の連続性に基づき計6調査地を選定した。また、各調査地で植生・土壌条件の異なる20m×20m の地点を2〜4地点設定し、計20地点を設けた。各地点においてアリ類群集調査および土壌条件調査を実施した。アリ類群集調査として、発見したアリ類を採集する見つけ採り、ハチミツとカット綿を用いたベイトトラップ、土壌のふるい採りの3種の調査方法を実施した。また、土壌条件調査として土壌硬度、土壌含水率、A0層の厚さの3項目の調査を各々10反復で測定した。解析としては、TWINSPAN解析による調査地および種群の分類を行った。
全出現種は4亜科16属23種だった。調査地の面積および森林の連続性が小規模になるにしたがって共通種のみが出現する傾向がみられた。一方で、小規模で孤立する調査地において環境省版絶滅危惧種であるトゲアリが出現した。これは小規模で孤立する緑地であっても、周辺の土地利用の履歴等、本種の生息が担保されてきた地方都市ならではの何らかの要因があると考えられた。また、TWINSPAN解析の結果、調査地は規模または植生条件により5グループに、アリ類は種毎の環境特性を反映した7種群に分類された。これはアリ類の環境指標としての有効性を示すと考えられた。


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