| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-307  (Poster presentation)

岡山県におけるミシシッピアカミミガメの食性と生息域の植物相について
Relationships between the feeding behaviours of Trachemys scripta elegans and the flora of habitats in Okayama Prefecture, Western Japan

*山地優奈, 矢野興一(岡山理科大学大学院)
*Yuna YAMAJI, Okihito YANO(Okayama Univ. Sci.)

ミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta elegans)は、日本全国に外来分布している北米原産の淡水ガメである。本種は雑食性であり、藻類や水草などの植物から、水生昆虫、ザリガニ・エビ、貝類、魚類などの動物まで、幅広く摂餌することが知られているが、幼体では主に動物質のものを好んで食べ、成長するにつれ植物質食性の傾向が強くなるとされている。近年、ミシシッピアカミミガメによる在来生物への影響や農作物・観賞用植物への食害についての報告がいくつかあり、問題になっている。しかしながら、生息域の野生植物に対する食害については詳細に調べられていない。そこで本研究では、岡山県内の3箇所の池から捕獲したミシシッピアカミミガメ(成体)の胃内容物と生息池の植物相を調査し、本種による野生植物に対する食害の実態を明らかにすることを目的とした。
2018年4月から12月まで、ミシシッピアカミミガメの成体32個体を捕獲し、胃の内容物を調べた結果、胃内容物は動物質のものが33%、植物質のものが67%であり、植物質のものが多いことがわかった。また、動物質は主にアメリカザリガニであり、植物質は主に植物片と藻類であった。さらに、季節別では、植物片は4月から12月までのどの時期でも見られたが、4月から5月は藻類、6月から7月はアメリカザリガニを主に食べている傾向が見られた。植物相調査では、3箇所の池から計25科47属56種の植物が確認でき、その中で最も植物種が多く生育していた池(21科34属40種)では、捕獲した個体から植物片(アカバナ科、バラ科植物など)が確認できた。このことから、ミシシッピアカミミガメは野生植物に対しても影響を与えていることが明らかになった。また、植物の出現種数が少ない池においては、その時期に最も食べやすい資源を多く摂餌していることが示唆された。


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