| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-330  (Poster presentation)

野生開花植物と景観構造がソバの訪花昆虫群集に与える影響
The effect of wild flowering plants and landscape structures on pollinator community of common buckwheat

*永野裕大, 横井智之(筑波大・保全生態)
*Yuta NAGANO, Tomoyuki YOKOI(Univ. of Tsukuba)

 送粉サービスを支えている訪花昆虫は世界的に減少しており、作物生産や野生植物の繁殖への影響が懸念されている。そのため訪花昆虫の増減に関わる要因が研究され、野生開花植物や景観による効果が明らかになりつつある。しかし、両効果は独立に検証されてきており、農地のもつ諸要因を包括的に評価するためにも両要因を併せて検討する必要がある。野生開花植物については、作物の開花中や開花前に存在する種数や花数が効果をもっている可能性がある。また、日本の農地はモザイク状の景観をもっており、局所景観の異質性が高いことが予想される。本研究では、訪花昆虫の増減に関わる要因を解明するために、ソバの訪花昆虫個体数に対する野生開花植物および局所景観構造の効果を検討した。
 調査は2018年8月(ソバ開花前)から9月(ソバ開花中)までの期間、長野県飯島町のソバ畑15枚を対象に行なった。訪花昆虫調査は15分間の見つけ採りとし、畦の野生開花植物とソバへ訪花する昆虫を対象に行なった。野生植物調査は畦に生息する開花植物を対象に行ない、種および花数を記録した。GISを用いて各ソバ畑から半径10, 50, 100, 200, 300, 400, 500mのバッファーを発生させ、森林および水田、住宅地、畦、ソバ畑、草地、空き地、他の作物畑の面積を算出した。
 訪花昆虫個体数に対する野生開花植物の効果は、ソバと同時期に開花した際にみられた。また、ソバの訪花昆虫個体数を説明するのに有効な空間スケールは半径300mであった。野生開花植物および局所景観構造を併せて解析した結果、野生開花植物種数および森林の占有的な景観構造がソバの訪花昆虫個体数を増加させる効果をもつことが明らかになった。以上より、様々な野生開花植物がソバと同時期に開花し、多様な餌資源を提示すること、森林は営巣場所や交尾場所などを提供することでソバの訪花昆虫個体数を増加させていることが示唆された。


日本生態学会