| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-339  (Poster presentation)

アリ群集における採餌パフォーマンス間のトレードオフ仮説の検討
The trade-off between foraging performances in an ant community

*野中春日(琉球大学), 下地博之(関西学院大学), 辻和希(琉球大学)
*Haruhi NONAKA(Univ. Ryukyus), Hiroyuki SHIMOJI(KWANSEI GAKUIN Univ.), Kazuki TSUJI(Univ. Ryukyus)

ニッチが似た多数種が共存する群集は「プランクトンの逆説」と呼ばれ注目されてきた。アリ群集もその例とされ、共存メカニズムが多数議論されている。代表仮説としてFellers(1998)の干渉能力と搾取能力間のトレードオフ仮説や、Cerda(1998)による活動気温と干渉能力間のトレードオフ仮説が知られるが、これらの仮説には否定的な検証結果もある。しかし、先行研究では用いた干渉能力の指標が研究者によって異なるなどの問題点が指摘される。例えば、Fellers(1998)は干渉能力として攻撃性を評価したのに対しParr & Gibbs(2012)は餌場の占有性を用いた。同じ干渉能力の指標として用いられたこの2つの指標の相関関係は明らかではなく、したがってこれらの研究は全く別のメカニズムについて議論している可能性がある。そこで本研究では、単一のアリ群集で、先行研究で用いられた指標を網羅的に調べトレードオフ仮説を詳細に検証した。沖縄島で同所的に見られる優勢なアリ6種を用いて、室内実験で、餌発見能力、餌占有能力、攻撃性、殺傷能力、防御力、高温耐性、低温耐性、活動可能温度幅を指標として評価した。指標間の相関関係を調べるために、積率相関分析と、複数測定値を総合した主成分スコアで重回帰分析を行った。その結果、単相関では得られなかった相関関係が重回帰分析では明示され、二律背反ではなく3形質以上がからむトリレンマ的関係である可能性が示唆された。また、同じ干渉能力の指標として用いられた餌占有と攻撃性の関係性を調べた結果、これらに相関関係は得られず、同じ指標として扱えないことが示された。これらの結果から形質間のトレードオフと、先行研究で一貫した結果が得られていない要因について議論する。


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