| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-377  (Poster presentation)

行動多型がある集団で生存率が上がるのはなぜか:多様性と個体間相互作用の関係
Why does a survival rate increase in a behaviorally polymorphic population? -insight from interaction among individuals

*友田七菜, 高橋佑磨(千葉大学)
*Nana Tomoda, Yuma Takahashi(Chiba Univ.)

種内の多型は個体群の生産性や安定性を高めることが知られている。このような効果はニッチの分化による種内での資源競争の緩和などに起因する。しかし、多型の生態的な効果は、条件によって変化することが最近になってわかってきた。キイロショウジョウバエにおいては、幼虫の採餌行動に遺伝的多型(よく動き回るRover型とあまり動かないsitter型)が存在する。本種では、負の頻度依存選択が働く低栄養条件においては単型の個体群よりも多型の個体群で増殖率が高く、正の頻度依存選択が働く高栄養条件においては単型の個体群よりも多型の個体群の増殖率が低くなる。そこで本研究では、個体間の相互作用に着目し、多様性の生態的効果やその条件依存性の背景に存在する行動的メカニズムを調べることを目的とした。2つの表現型の幼虫を5通り(Rover:sitter=0:4、1:3、2:2、3:1、4:0)の存在比で低栄養か高栄養の培地上に配置して動画撮影し、個体ごとに他個体との遭遇時間を求めた。その結果、個体群全体(4個体の合計)での個体間の遭遇時間は、低栄養条件では多型がある個体群の方が単型のみの個体群よりも短く、高栄養条件では多型がある個体群の方が長かった。このことは低栄養条件では異型間の遭遇が生じにくく、高栄養条件では生じやすくなることを示唆している。実際、両型が存在する個体群では低栄養条件で同型間、高栄養条件で異型間の遭遇が多い傾向があった。また、低栄養条件においては両表現型ともに自身が少数派であるほど他個体との遭遇時間が短く、高栄養条件においてはその逆の傾向があった。遭遇は資源競争や共食いのリスクを高めると考えられているため、異型間の遭遇のしやすさが条件によって変化することで、低栄養条件では負の頻度依存選択や正の多様性効果を生じ、高栄養条件では正の頻度依存選択や負の多様性効果を生じると考えられた。


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