| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-378  (Poster presentation)

北海道朱太川水系におけるヤマメの採餌環境としての湧水支流の重要性
Importance of a spring-fed tributary as feeding habitat for Oncorhynchus masou masou in the Shubuto River system of Hokkaido

*星剛介(中央大学), 境優(中央大学), 脇谷量子郎(中央大学), 岩渕克哉(中央大学), 高橋興世(黒松内町), 斎藤均(黒松内町ブナセンター), 鷲谷いづみ(中央大学)
*Gosuke HOSHI(Chuo Univ.), Masaru Sakai(Chuo Univ.), Ryoshiro Wakiya(Chuo Univ.), Katsuya Iwabuchi(Chuo Univ.), Kose Takahashi(Kuromatsunai town), Hiroshi Saito(Kuromatsunaicho Buna Center), Izumi Washitani(Chuo Univ.)

地下水の湧出によってもたらされる湧水支流は、非湧水支流と比べて流量や水温が安定した独特な流水環境を形成している。安定した流量は河床土砂の流亡を緩和し、砂泥に富む河床をもたらす。また、安定した水温は夏期に冷涼で冬期に温暖な水域をもたらす。そのため、湧水支流は独特な生物相を成立させるだけでなく、季節に応じて湧水―非湧水支流間を移動する生物にも利用されると考えられる。本研究では、湧水―非湧水支流間を移動する生物としてヤマメを取り上げ、それぞれの支流とそれらが合流する本流の計4か所で季節的にヤマメの個体数密度と胃内容物を把握した。
北海道黒松内町を流れる朱太川水系における各調査区間で底質、水深、流速等の生息環境、底生動物無脊椎動物(サーバーネット)、流下昆虫(ドリフトネット)、ヤマメの個体数密度(電気ショッカー・投網)、胃内容物(ストマックポンプ)を調査した。調査期間は、2017年8月24日~8月29日、11月17日~20日、2018年5月29日~5月30日、10月8日~10月10日である。
湧水支流では、他の調査区間よりも河床の細粒土砂被度が高かった。その結果、細粒土砂に掘潜して生活するユスリカ科が優占し、他の調査区間より底生無脊椎動物の個体数密度が有意に高かった。ヤマメの胃内容物は、底生動物相に対応して湧水支流でユスリカ科および全胃内容物のバイオマスが高い傾向にあった。また、ヤマメの個体数密度も季節を通して湧水支流で高く、特に11月で最も高かった(約7.0個体/㎡)。
以上のことから、湧水支流では細粒土砂が多く堆積することでユスリカ科が優占し、それをヤマメが採餌していることが判明した。さらに、相対的に水温が高い冬期の湧水支流は、餌資源の豊富さに加えて温暖な環境をもたらすことで、ヤマメに好適な生息地を提供していると考えられた。


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