| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-381  (Poster presentation)

ニホンジカ個体群動態のベイズ的推定法の評価:StanとWinBUGSどちらを選ぶか?
Evaluation of Bayesian estimation methods for sika deer population dynamics; Stan or WinBUGS?

*木村友朗, 中村和幸(明治大学)
*Tomoro KIMURA, Kazuyuki Nakamura(Meiji Univ.)

 各都道府県は生態系管理の一環としてシカの個体数推定を行っている.個体数推定は,その変動の様子をモデリングするプロセスと,モデルに含まれるパラメータの値をデータから推定するプロセスに分けられる.モデリングにおいては,状態空間モデルを用いて時空間的な個体数の変動を表現する方法が広く適用されている.しかしながらそのようなモデルはパラメータが高次元かつ複雑な確率分布を含むため,パラメータ推定が困難であることが知られている.より柔軟なモデリングによる調査のために,より良いパラメータ推定法の選択が重要である.
 多くの先行研究では,パラメータ推定にはギブスサンプリングという方法が用いられている.これはマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)のアルゴリズムの一つで,WinBUGSやJAGSといった確率的プログラミングソフトから容易に扱うことができる.これに対し,近年開発が盛んになっているStanというソフトでは,ハミルトニアンモンテカルロ(HMC)法という別のMCMCアルゴリズムが用いられている.HMC法では物理法則を応用した仕組みによって効率良いサンプリングが可能となっている.
 本研究ではWinBUGSによるギブスサンプリングとStanによるHMC法の実装それぞれを用いてシカ個体数推定を行い,推定法としての性能を比較した.HMC法を用いる際,数値計算の制約からモデルを修正する必要があり,その1つのアプローチを提示した.実験の結果, HMC法を用いた場合,個体数推定の時間効率を大幅に改善できることを示した.


日本生態学会