| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-424  (Poster presentation)

環境DNAから探る、日本固有種シシャモの遡上と分布
Capturing spawning migration of the endemic anadromous species, Shishamo smelt (Spirinchus lanceolatus), using environmental DNA

*八柳哲(北海道大学農学院), 神戸崇(北海道大学農学院), 水本寛基(北海道大学農学院), 小林由美(北海道大学農学院), 坂田雅之(神戸大学大学院), 源利文(神戸大学大学院), 石田良太郎((地独)道総研), 新居久也(北海道栽培公社), 荒木仁志(北海道大学農学院)
*Tetsu YATSUYANAGI(Hokkaido Univ.), Takashi KANBE(Hokkaido Univ.), Hiroki MIZUMOTO(Hokkaido Univ.), Yumi KOBAYASHI(Hokkaido Univ.), Masayuki SAKATA(Kobe Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.), Ryotaro ISHIDA(Hokkaido Res. Org.), Hisaya NII(Hokkaido Aqua. Promo. Corp.), Hitoshi ARAKI(Hokkaido Univ.)

 シシャモは北海道太平洋沿岸にのみ生息する日本の固有種であり、初冬に産卵のため河川に遡上する遡河回遊魚として知られる。文化的利用価値が高く古くから珍重されてきた魚種であるが、分布が限られていることに加え、1960年代に端を発する急激な漁獲量減少などの要因から資源保護が急務とされており、特に襟裳岬以西のシシャモ個体群は「絶滅の恐れのある地域個体群(Lp)」として環境省レッドリストにも記載されている。産卵遡上動態や正確な分布の把握は資源管理のためにも重要であるが、捕獲等の従来の調査方法では調査範囲や回数が限られていたことから、シシャモが短い期間の中で「いつ、どこに、どれだけ遡上するか」といった基本的な知見は依然として乏しい状態にあると言える。
 こういった現状を打開するため、発表者らは非侵襲的かつ簡便な生物検出ツールである環境DNA技術に着目した。環境DNA技術は環境媒体中に漂う生物のDNAを解析することで、その環境中における種の在・不在やおおよその生物量の推定を可能にする手法として知られる。発表者らはシシャモに特異的な環境DNAの検出系を開発し、採水調査のみによる遡上の時系列動態の把握や、新規分布解明などに取り組んできた。
 本発表では2018年10月末から2ヶ月間に渡り、北海道胆振・日高地方の6河川を対象に行ったシシャモ環境DNA調査の結果を報告する。6河川のうち東西の端に位置する2河川はこれまでシシャモの遡上に関して報告がなかったものの、結果としてそれらを含むいずれの河川においても環境DNAが複数回検出された。さらに河川毎の環境DNA最大検出時期が一定地域内で類似した傾向を示すなど、これまでの知見にはなかった河川個体群の地域性なども見えてくる結果となった。今後も継続してデータを集積し、より定量的に遡上規模の評価を行うことによって、シシャモの資源管理に大いに貢献できるものと期待される。


日本生態学会