| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-437  (Poster presentation)

バイオチャー散布が暖温帯コナラ林の土壌炭素フラックスに及ぼす影響
Effect of biochar application on soil CO2 flux in Quercus serrata forest

*惠日格也(早稲田大・院・先進), 月森勇気(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)
*Kakuya ENICHI(Waseda Sci. & Engi.), Yuki Tsukimori(Waseda Sci. & Engi.), Mitsutoshi Tomotsune(Waseda.edu), Hiroshi Koizumi(Waseda.edu)

土壌中に含まれる炭素は従属栄養生物呼吸(HR)によって大気中へ放出される。しかし、炭素隔離の有効な手段として注目されているバイオチャーを散布した森林において、HRの変動は未だ十分に理解されていない。本研究では暖温帯コナラ林において、バイオチャー散布がHRに及ぼす影響の解明、さらにバイオチャーの炭素隔離効果を検証することを目的とした。
2015年11月に12点のコドラートを設置し、1ha当たりのバイオチャー散布量に応じて0t区、5t区、10t区とした。2017年8月にHR測定のため、各区画に1点ずつトレンチ区の設置を行った。2017年11月から2018年11月まで1ヶ月間隔でHRと、HRと根呼吸(RR)の和である土壌呼吸(SR)を測定した。さらにSRとHRの測定結果からRRを推定した。
各区画におけるHRの1年間の積算値を比較すると、0t区、5t区、10t区でそれぞれ5.2、5.4、7.1tC ha-1 year-1と見積もられた。このことから、バイオチャーの散布量増加に伴ってHRが増加する傾向が見られた。これはバイオチャー散布による易分解性の有機物の添加tお微生物量の増加に起因すると考えられる。また、HRの季節毎の積算値を比較すると、5t区では主として気温の高い夏に、10t区では季節に関係なくHRが増加していた。さらに、RRの積算値は0、5、10t区で1.4、1.6、1.1tC ha-1 year-1と見積もられ、バイオチャー散布による有意な影響が認められなかった。しかしRRの温度依存性を示すQ10値に着目したところ、0、5、10t区でそれぞれ1.86、1.32、1.10の値を示し、バイオチャー散布によって温度依存性が減少する傾向が見られた。
これらのことからバイオチャーの散布によってHRが増加することが示された。加えて、バイオチャーの散布量によってHRに及ぼす影響が時期ごとに異なることが明らかになった。また、バイオチャーの散布によるHR増加量がバイオチャー散布量よりも少ないことから、森林におけるバイオチャーの散布が炭素隔離の手段として有効であることが示唆された。


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