| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-440  (Poster presentation)

冷温帯コナラ林、カラマツ林、アカマツ林における6年間にわたるNEPの経年変動の解明
Inter-annual variations in biometric-based NEP between three different forests in a cool-temperate zone over 6 years

*加藤夕貴(早稲田大・院・先進), 鈴木庸平(早稲田大・院・先進), 小山悠太(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)
*Yuki KATO(Waseda Sci. & Engi.), Yohei Suzuki(Waseda Sci. & Engi.), Yuta Koyama(Waseda Sci. & Engi.), Mitsutoshi Tomotsune(Waseda Edu.), Hiroshi Koizumi(Waseda Edu.)

 森林生態系の炭素収支を表す生態系純生産量(NEP)は樹種によって異なるとされる。しかし樹種の違いがNEPに及ぼす影響を同一環境下、同一林齢において、長期間にわたって着目した研究は極めて少ない。本研究ではNEPの経年変動の要因を解明するために、異なる3林分のNEPを6年間にわたって測定した。

 調査は冷温帯の近接したコナラ(落葉広葉樹)、カラマツ(落葉針葉樹)、アカマツ(常緑針葉樹)がそれぞれ優占する50年生の3林分で行った。2012年から2017年まで樹木成長量(ΔB)と枯死・脱落量 (LF)、従属栄養生物呼吸量(HR)を測定し、バイオメトリック法を用いてNEPを算出し経年変動の比較を行った。

 3林分における6年間のΔBの経年変動を比較すると、カラマツ林とアカマツ林では類似した傾向を示した。特に2014年と2016年には低い値を示した。一方、コナラ林では2017年を除いて大きな経年変動は見られなかった。また各年のΔB値はカラマツ林、コナラ林、アカマツ林の順に小さくなる傾向を示した。次にLF値を比較すると、カラマツ林とアカマツ林では2013年と2017年に大型台風の影響を受けて増加したが、コナラ林においては大きな経年変動は認められなかった。最後に各林分のHRを比較すると、コナラ林、アカマツ林、カラマツ林の順に小さくなった。さらに、HRと環境要因との関係を見ると、どの林分でも地温に依存して変動し、特にコナラ林では夏の地温の影響を受けて大きな経年変動を示した。
 これらの値を基に、3林分における6年間のNEP(tC ha⁻¹ yr⁻¹)を推定すると、アカマツ林で2.49±1.22、コナラ林で2.58±1.62、カラマツ林で3.50±1.72の値を示した。さらに経年変動を比較すると、カラマツ林、アカマツ林では類似した変動を示したが、コナラ林では大きな経年変動は見られなかった。


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