| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-480  (Poster presentation)

情報提供はサケ死骸消費者に対する認識を変える?~都市での腐肉食機能保全に向けて~
Could information provision change human perception of salmon-carcasses consumers? : Implications for scavenging-services conservation in urban areas

*伴遼太郎, 庄子康, 石山信雄, 中村太士(北大院・農)
*Ryotaro Ban, Yasushi Shoji, Nobuo Ishiyama, Nakamura Futoshi(Hokkaido Univ.)

動物の死骸を消費する哺乳類・鳥類(腐肉食者)の機能(腐肉食機能)は、食物網の安定化や栄養塩分散を通じて、都市の自然環境の維持に貢献すると考えられる。また、腐肉食機能自体も、悪臭軽減、疾病抑制など、様々な生態系サービスをもたらすため、都市において腐肉食者を保全する意義は大きい。しかし、腐肉食者は都市住民から嫌悪され駆除を望まれる可能性もあるため、都市住民の認識や許容度といった社会学的側面を把握し、保全策を検討することが必要だと考えられる。近年、人々の保全意識を変化させる手段として、野生動物の生態や役割等に関する情報提供が注目されつつある。そこで、本研究では腐肉食機能に関する情報提供が腐肉食者に対する都市住民の認識や許容度に与える影響を明らかにすることを目的とした。
2018年9月~10月にアンケート調査を実施した。調査は北海道札幌市豊平川周辺の緑地で行い、腐肉食機能に関する情報を提供していないアンケート(情報無版)と提供したアンケート(情報有版)を200部ずつ訪問者に配布した。調査地でシロザケ死骸の主要消費者として確認されたアカギツネ、カラス属、タヌキについて、認識・許容度に関する7種類の質問に5段階評価で回答して頂いた。情報無版128部、情報有版112部が回収できた。情報無版を対象に順序ロジットモデルを用いた解析で認識・許容度を種間で比較した結果、カラス属は他の2種に比べてネガティブな認識を持たれ、許容度も低かった。両アンケートを対象に同様の解析で情報提供の影響を評価した結果、全ての質問で情報提供により認識や許容度が向上する傾向が見られ、他の2種に比べカラス属は多くの質問で有意に認識が向上していた。本研究から腐肉食機能に関する情報提供が認識・許容度の向上に寄与しうることが示されたが、その効果が小さい場合もあり、提供する情報の質や種類について更なる検討が求められる。


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