| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-497  (Poster presentation)

金華山における蘚苔類の種多様性及び分布
Species richness and distribution of bryophytes of Mt. Kinka

*天本匡宥, 山口富美夫(広島大学大学院)
*Kyousuke Amamoto, Tomio Yamaguchi(Grad school, Hiroshima Univ.)

岐阜県岐阜市に位置する金華山は,国有林・鳥獣保護区として長年保護されてきたため,市街地に囲まれるが,照葉樹の自然林が残る大変希少な低山地である.日本の照葉樹の自然林の残存面積は約1.6%しかなく,国内の照葉樹自然林の生物多様性を保全していく必要がある.また,金華山では,いくつかの蘚苔類の希少種が報告されているが,詳細な分布に関する情報はなく,これらの種の保全のためにも蘚苔類の種多様性を調査すべきである.本研究では金華山において蘚苔類の種多様性及び希少種の分布を把握し,これらに対して環境要因がどのように影響を与えているのか評価することを目的とした.調査の結果,希少種であるBazzania mayebarae,Plicanthus birmensis,P. hirtellusの生育を確認し,金華山の北斜面に局所的に分布することが明らかになった.調査地で測定した微環境データを用いて正準対応分析をした結果,B. mayebaraeは岩石被覆率が高く,斜度が大きい環境,P. birmensis,P. hirtellusは樹冠開空度が高い環境に分布する傾向にあった.また,蘚苔類の種数と岩石被覆率,斜度,落葉被覆率には有意な相関があった.加えて,熱帯地域を中心に分布する Drepanolejeunea vesiculosaを岐阜県新産として確認し,分布を把握するとともに生育頻度が低いことが明らかになった.金華山西斜面の標高110 m付近におけるツブラジイ自然林下は,蘚苔類の種多様性が最も高い地点であり,北斜面の標高150 m付近におけるヒノキ自然林下は,金華山において生育頻度が低い種が最も分布する地点であった.また,クラスター解析の結果,両地点は種組成が特異的である結果となり,保全上重要であることが明らかになった.


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