| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-501  (Poster presentation)

関東の都市近郊地域の河川敷と水田におけるニホンイタチの食性比較
Comparison of food habits of Japanese weasels (Mustela itatsi) between riparian zones and paddy fields in Kanto suburbs

*三井華(東京農工大学), 角田裕志(環境科学国際センター), 金子弥生(東京農工大学)
*Hana MITSUI(TUAT), Hiroshi Tsunoda(CESS), Yayoi Kaneko(TUAT)

ニホンイタチ (Mustela itatsi ) は、都市近郊の自然生態系や農業生態系における高次捕食者であるが、人為的な食物資源への依存が少なく、都市化への順応が困難であると考えられている。本研究では、本種の生息個体数の減少が懸念される都市近郊地域における、生息状況および食性を明らかにし、人為的な環境改変の影響を受けた生息地における採餌環境について検討することを目的とした。東京都羽村市の多摩川河川敷と埼玉県加須市の水田地域において、2017年7月~2018年8月にフンを採取した。ハンドソーティング法により内容物を分析し、採食物を季節間ならびに地域間で比較した。また各地域のフンの発見状況から本種の生息状況を検討した。河川敷では、夏と秋は昆虫類、冬は果実類に偏った食性を示した。また踏査毎のフン発見数にばらつきがみられ、イタチによる生息地利用が不安定である可能性が示された。一方で、水田地域における主要な採食物は、夏・秋・春が昆虫類、甲殻類、および両生類・爬虫類、冬が果実類であった。踏査毎のフン発見数は一定しており、イタチが常時当該地域を利用した可能性が示された。地域比較から、水田地域は河川敷に比べて、多様な餌資源が利用可能であったと考えられる。また本研究と、多摩川同地点や他地域の先行研究の結果を比較した。現在の河川敷は、沖縄県座間味島の哺乳類や両生類・爬虫類の利用可能量が少ない地域の事例に類似しており、採餌環境としての質の低下の可能性が示唆された。一方で、水田地域の食性はイタチが比較的多く生息していた1995年の多摩川の事例に類似しており、食物資源が豊富であることが示唆された。餌資源の多様性の向上は、餌の利用可能性を高めることにつながる。都市近郊の多様性が保たれた水田地域の維持・管理、および多様性が低下した環境の餌資源の復元が今後重要になると考えられる。


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