| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-008  (Poster presentation)

外来種アライグマ・ハクビシンの餌としての廃果の価値
Feeding efficiency of invasive raccoon and masked palm civet in fruit dump sites

*小坂井千夏, 秦彩夏, 佐伯緑, 竹内正彦(農研機構中央農研)
*Chinatsu KOZAKAI, Ayaka HATA, Midori SAEKI, Masahiko TAKEUCHI(CARC, NARO)

 野生動物に安易に農作物を利用させることは、その農作物が出荷されるか否かを問わず「餌付け」である。しかし、果樹や果実的野菜の生産で規格外等の理由から廃棄される果実(以下、廃果)は、農地周辺に大量に放置されることも多い。廃果を食べた外来哺乳類(アライグマ、ハクビシン)は個体数を増やし、農作物被害を悪化させるおそれがあるが、どの程度良い餌となっているのか具体的には分かってない。そこで本研究では、果樹・果実的野菜の収穫量第1位であるイチゴを対象として、栽培果実及び廃果が哺乳類の餌としてどのような価値を持つか、エネルギー獲得効率の観点から具体的に明らかにすることを目的とした。
 イチゴ園の廃果場(茨城県県南地域)に自動撮影カメラを設置したところ、特定外来生物アライグマ、外来種ハクビシン、在来種ではアナグマ、タヌキ、ノウサギによるイチゴ廃果の採食を確認した。動画解析によって単位時間当たりに食べる廃果数を計測すると、1分間当たりの中央値で、最多はハクビシンの6.0個、最少はアライグマの3.8個となった。廃果場における滞在時間の中央値は、ハクビシンでは3分間、アライグマでは9分間であり、1回の滞在で1日の必要エネルギー量の約1/4(25~26%)を獲得できる計算となった。最も長く滞在したハクビシンの場合(14分間)には、たった1回の訪問で1日に必要なエネルギー量を全て(110%)獲得できていた。在来種の1回の滞在時間の中央値はアライグマより有意に短く2分間で、この時に獲得できるエネルギー量は1日の必要量の6~7%であった。
 たとえ捨てられる廃果であっても、外来種を含む中型サイズの哺乳類にとってエネルギー獲得効率の高い餌となることを本研究は科学的に裏付けた。


日本生態学会